1. 多様な技術を統合する装置設計とは
当社には非常に多くのエンジニアが在籍しており、回路設計者(PCBA*1の設計)、論理設計者(FPGA*2の設計)、
ソフトウェア設計者(ファームウェアやアプリの設計)、機構設計者(筐体・メカ設計)など、さまざまな専門分野に分かれています。
これらの設計者は、それぞれ異なるスキルを持ち、特定の技術領域に特化している場合が多いです(中にはマルチスキルを有するつわものもいますが)。
では、これらの技術を統合して装置設計*3を行うにはどのようなスキルが求められるのでしょうか?
理想を言えば、すべての技術分野に精通したマイスターがいると良いのですが、実際にはそのような人材は非常に稀です。
装置設計は多様な技術を融合させる作業ですが、どのような装置(製品)にするか、いわゆる設計思想が重要です。
この設計思想を具現化するためには、各設計者やステークホルダーと協働するスキルが装置設計者にとって最も重要な能力かもしれません。
- *1
- PCBA:Printed Circuit Board Assemblyの略でプリント基板実装のこと
- *2
- FPGA:Field Programmable Gate Arrayの略でフィールド(現場)でプログラムすることができるゲートアレイのこと
- *3
- 装置設計とはハード・ソフト・構造・機構含めたシステム設計のこと

2. 装置設計における三つの重要要素
私は装置設計において特に重要な要素は、以下の三つと考えています。
・品質
・コスト
・生産しやすさ
まず、品質について考えてみましょう。品質には多くの側面がありますが、最も重要なのは、市場で確実に動作し、お客さまが求める機能を満たすことです。そのためには、満足できる動作時間を提供することが必要不可欠です。
次にコストについてですが、これは品質に密接に関連しています。ただ単に安価な部品を使用するだけでは十分ではありません。コストパフォーマンス(コスパ)も非常に重要です。
例えば、24時間365日、10年間にわたり、しかも冷房のない環境でも確実に機能する装置を設計するためには、信頼性の高い部品を選択する必要があります。しかし一日2時間しか稼働しない装置に高価な部品を使うのは、経済的に無駄といえるでしょう。
さらに、操作性や見た目(意匠)も用途に応じて異なる要求があります。これらの要素のバランスを考慮しながら、最適な設計を行うことが装置設計の醍醐味だと考えています。
また、生産しやすさも非常に重要です。組み立ての順番や検査方法を考慮し、生産効率を向上させるための設計が求められます。構造は、できるだけ組み立て時の調整が不要になるように設計したいですね。しかし、今後はロボットによる組み立てが標準化されることで、人手による作業の限界を超えた設計が可能になるかもしれません。
ただし、メンテナンスを人手で行う装置については、やはり人手で組み立てやすい設計が求められるでしょう。
3. 一気通貫できる装置設計の楽しさ
装置設計は非常に難しい分野ですが、それと同時に非常に楽しい設計プロセスでもあります。機能をソフトウェアで実現するのか、ハードウェア(FPGA)で実現するのかといった議論を、設計者間で交わす中で、時には意見の衝突もありますが、それが設計の質を向上させる要因にもなります。
そして装置が完成し、出荷される瞬間には、達成感が非常に大きいです。
このような経験を持つ設計者が協力してくれると、心強いと思いませんか?
日立情報通信エンジニアリングでは、こうした経験豊富なエンジニアが上流工程からお手伝いをさせていただきますので、ぜひお気軽にお声がけください。
私たちと一緒に、素晴らしい装置を設計しましょう。
2025年7月
株式会社 日立情報通信エンジニアリング
エンジニアリング事業部 第4本部 第3部 岩崎 慶介
※編集・執筆当時の記事のため、現在の情報と異なる場合があります。編集・執筆の時期については、記事末尾をご覧ください。