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今回は、ハードウェア開発を担当している、エンジニアリング事業部 通信技術開発本部 三宅 英章さんとソフトウェア開発を担当している吉田 達哉さんにお話を聞きます。
――では、早速ですが組み込みエンジニアリングにおける当社の強みを聞かせてください。
三宅:実はお客さまからよく当社の強みとして耳にする話があります。それは、ハードウェア開発とソフトウェア開発が一体となっていることと、エンジニアが豊富なのでどちらもまとめて任せられるということです。お客さまからすると窓口が一本化されお話がしやすいのだと思います。また、この特長は、何かトラブルがあった場合には、さらに大きな意味を持ってきます。
――それは何ですか?
三宅:開発を行っているとトラブルは付き物です。開発したモノが正しく動かずに、「ハードが悪いだろう」「ソフトが悪いだろう」という話によくなります。これらが異なる会社が担当すると解決にも時間が要するのが分かりますよね。なすり付け合ってもお客さまにご迷惑をお掛けするだけ。当社の場合は、同じチーム内にハードウェア担当者もソフトウェア担当者もいますので、お客さまのために、一致団結して解決に向かおうとする力は素晴らしいと思っています。
――ソフトウェアを担当している吉田さんからみてどうですか?
吉田:私は、組み込みソフトウェアを開発しています。期待通りに動かないときは、ソフトウェア、ハードウェアのいずれに問題があるからなのかという議論をハードウェア担当と常に会話をしながら進めています。ハードウェア担当者のすぐそばでソフトウェア開発をしているので、閃きや気づきが得られやすいということがあると思います。
――具体的な連携の事例を教えてください。
吉田:あるネットワーク機器を開発した時の話ですが、その機器が何かの契機にソフトウェアが突然再起動してしまうという問題が発生しました。最初はソフトウェアが疑われて現地ログの解析を進めていましたが、なかなか不具合が見つからず困り果てていました。そんな時、ハードウェアも当社が担当していたので現地に来てもらって一緒に調査することをお願いしました。ハードウェア担当が現地でオシロスコープを使って調べてみると、機器が搭載されているラック内のある電源ケーブルからノイズを受けていることが分かり、それが原因で再起動が起きていることが判明しました。そして、この件は電源ケーブルの配線ルートの工夫などで対策してもらいました。その際、現地対応のお願いに二つ返事で応えてもらって感謝しています。こうした連携のフットワークの良さも当社の強みだと思います。
――ハードウェアを担当する三宅さんはそういう事例はありますか?
三宅:もちろんあります。 お客さまから開発依頼のあった機器だったのですが、あと1か月後には出荷開始という時期に、その製品のスピーカー部分から微かにノイズのような「ジィー」っというような音が聞こえるとお客さまからご指摘を受けたのです。それは耳を澄まさないと聞こえないくらいの微かな音でしたが、とても静かな環境で使うことを想定していたお客さまとしては譲れないところでした。私は「これはハードウェアを見直さないと駄目だろう。でも期限は迫っている。」と頭を抱えていました。そんな時に同じチーム内にいたソフトウェア開発の担当に何とかならないか?と相談したところ、「三宅さん、その音は人の耳で聞こえる音ですよね?まずはその音の周波数を特定しましょう。」と言われました。急いでその周波数サイクルを特定してそれを伝えると、ソフトウェア側が調査を実施し、同じ周期でメモリーを読み出している処理があることを見つけました。次の問題はこの音をどう消せば良いか、です。またそこでもソフトウェア担当から機転の利いた発言がありました。「特定のサイクルだから音が聞こえるのであって、何倍かの周期で読み出せばもっと高周波になって人の耳には聞こえなくなるんじゃないかな?」というのです。彼は1時間くらいでパッとソフトウェアを改良してくれて、それで試してみると、まぁ手品のようにその音は聞こえなくなっていました。
――お客さまの反応は如何でしたか?
三宅:そのことをお客さまに伝えると「どうしてそんなことがすぐにできるのですか?」と驚かれたのを覚えています。これまでの経緯をお伝えするとお客さまから「ハードウェアとソフトウェアを一緒に解析して、会話によってヒントが生まれ、新たな視点での解決策が導き出せるのは素晴らしいですね。」とお褒めの言葉をいただきました。ハードウェアとソフトウェアの両方を担当できる一心同体な会社だからできた事例だと思います。勿論、ただ一緒にいるだけでは駄目で、プロフェッショナルなエンジニアがお互いに常日頃からコミュニケーションして刺激し合うことで、さまざまなアイディアや解決方法が湧き出てくる。そんな技術者集団であるというのが強みですよね。
――2つの事例とも、当社の中でハードウェアとソフトウェアがお互いを支え合っていることが良く分かるケースでした。ハードウェアとソフトウェアが強い信頼関係で結ばれているからこそ、トラブルがあった際でも一致団結して早急な原因究明と対策が可能となっています。そしてそれは常日頃からのコミュニケーションからなせる技であり、それによってお客さまからの信頼を得られていることが分かりました。本日は短い時間でしたが、お話を聞かせていただき、ありがとうございました。
2022年8月
株式会社 日立情報通信エンジニアリング
エンジニアリング事業部 通信技術開発本部 第2設計部 担当部長 三宅 英章
エンジニアリング事業部 通信技術開発本部 第2設計部 担当部長 吉田 達哉
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