ページの本文へ

第26回AI時代にこそ、自分自身を育てる
―「どう学ぶか」のメタ認知と技術教育の話

キーワード

  • #人財育成
  • #AI活用
  • #Plus one

みなさん、こんにちは。いつも当コラム、当ブログサイトをご覧いただき、ありがとうございます。
新年度ということで、新しく何かを学び始めた方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は「学習」をテーマに考えてみたいと思います。

「わからない」から始まる学び

「わからないことがわからないと、わからないことはわからない。」
最近見た法廷関連のドラマで、主人公が何度も口にしていた言葉です。
このセリフを聞いたとき、まるで論理学の講義を受けているような気分になりました。
その後、主人公が他の人とは違う視点や切り口で真実を明らかにしていく様子を見て、「わからないことが“わからない”うちは、何がわからないのかさえ、わからない。」という意味だと私もようやく理解できました。
歴史上有名なソクラテスの言葉、"I know that I know nothing" (無知の知)を思い出します。

学習の質を変える、メタ認知の力

人の知識はネットワーク構造になっている、ということをご存知の方も多いと思います。
新しい知識は、既に持っている知識のどこかに結び付くことで定着します。そのため、経験が豊かなほど覚えやすくなります。
また印象的な事柄であるほど、問題意識のある事柄であるほど知識に結びつきやすいと言われています。
こうした学習のしやすさには、自分自身を客観的に捉える心の働きである「メタ認知」が関わっています。
メタ認知は、成功体験よりも失敗体験の方がきっかけをつくりやすくなります。

学ぶことは、「自分を知る」こと

技術教育のすすめについて書かれているブログを紹介します。
不安を感じていた技術に対し、教育を通じて理解が進み、安心して次のステップへ進めたというお話です。

■今回のピックアップ・ブログ

最初に未知であると自覚して基礎的な技術教育の受講から始め、それをきっかけに理解不足を解消しながら、次の学習へと広げて、スキルアップしていく様子が書かれています。
「自分ごと」に感じて学習を発展させている様子は、まさにメタ認知的な学習活動をされているように私は思えました。

私自身の例になりますが、 「関連図をイメージした方が理解しやすい」「音声で聞いた方が記憶しやすい」と自分の性質を経験的に把握しています。そのため、学習の際には次のようなことをすることが多いです。
・大きな図に用語を並べ直す
・理解があやふやな部分は再学習、または他の参考書を調べる
・学習した内容を友達や職場で簡単に話す

思考を手放してしまう便利さ ―メタ認知怠惰という落とし穴

ところで、メタ認知を阻害するものはあるでしょうか。

「メタ認知怠惰」というのもあるそうです。
人が思考過程などの自己の認知プロセスを十分に働かせないことをいいます。
「認知的オフローディング」ともいい、これは本来人間が行っている記憶、判断、問題解決などの認知作業を外部のツールやAIなどに委ねてしまうことです。

人間は「認知的な省エネ」を志向する性質があり、楽で速い意思決定に流れやすいことが知られています。
さらに自動システムの提案を過度に信頼し、誤りがあっても見逃してしまう性質も持っています。
このような傾向は「オートメーション・バイアス」と呼ばれています。直感思考に頼り、熟慮を避けてしまいがちになり、考えをめぐらす思考プロセスが損なわれます。

そういえば、最近私自身も、生成AIと対話しながら文章のストーリーや内容を考える中で、生成AIが出した回答を、深く考えずにそのまま採用してしまいがちになっている気もします。

学び続けるための、ちいさな工夫

私たちの脳という臓器は、コストパフォーマンスが悪いので有名です。全身の約2%の容積に過ぎないのに、体内エネルギーのおよそ20%を消費していると言われています。

こんな臓器ですから、省けるエネルギーがあるなら喜んで、倹約してしまうというのがデフォルト設計だそうです。
うなずけますね。学習意欲が持続しづらいのは人間の性質なのかもしれません。

AIが身近になり、知識を得ること自体は、以前よりずっと簡単になりました。
だからこそ今、「何を知っているか」よりも「どう学ぶか」が問われています。
自分は何がわかっていて、何がわかっていないのか。どうすれば理解しやすいのか。

メタ認知は、学び続けるための「自分専用のナビゲーション」です。

便利さに頼りすぎず、自分の思考と対話しながら、時折小さな「にんじん(自分へのご褒美)」も使いながら、飽きずに疲れすぎないペースで、学びを続けていきたいですね。

2026年4月
株式会社 日立情報通信エンジニアリング
経営戦略本部 ブランド・コミュニケーション部
阿部 哲也

※編集・執筆当時の記事のため、現在の情報と異なる場合があります。編集・執筆の時期については、記事末尾をご覧ください。