こんにちは、エンジニアリング事業部第4本部第2部の山口です。私は、モデルベース開発を用いてお客さまの設計開発支援を行っています。
モデルベース開発とは、製品装置の動作を仮想空間で再現(以後、モデル化)し、シミュレーションによりアニメーション表現することで実機のない早期の設計段階から装置検証が可能となる開発手法です。
私は今まで業務を一からすべて任されることがありませんでしたが、入社3年目で任されたモデルベース開発について、その取り組むきっかけから自分のチームで業務を推進するまでの出来事についてお話しします。
問題解決に向けた技術開発
お客さまは装置が出来上がってから発覚する不具合に悩んでいました。装置が完成した後の不具合対応は、修正に伴う影響が大きく、多くの時間や工数を費やしていました。そこでお客さまの悩みを解決するために技術開発を行うこととなり、私が担当となり、取り組むこととなりました。
モデルとの出会い
技術開発を開始したものの、どうすれば装置完成後の不具合発生減少が実現できるか何もわからない状態からスタートしました。そこでまず世の中の技術を知るために技術調査・実現性検討を始め、その中で私はモデルベース開発という開発手法と出会いました。
モデルベース開発とは、冒頭でご説明した通り、製品をモデル化し、シミュレーションすることで製品動作をアニメーション化し、検証を行うことができる開発手法です。これにより実機のない早期設計段階から検証・フィードバックを繰り返すことができ、検証工程移行後の不具合発生を低減することが期待できます。私はこの手法が効果的であると考え、モデルベース開発技術の習得に向け、動き出しました。
まず、外部の研修を受け、基本的な知識・技術を学び、その後実際にお客さまの装置をイメージしてモデルを作成してみました。当初はさまざまな機能や制限などに苦戦していましたが、試行錯誤を重ね、うまくシミュレーションが動いたとき、感動を覚えるとともに製品動作やセンサー反応、機構的な干渉などをモデルから確認することができたため、モデルベース開発は現状のお客さまの問題を解決できる技術であると確信しました。
モデルを活用した案件獲得と実践レベルでのモデル設計
早速、お客さまの装置をイメージして作成したモデルを使用して、お客さまへ装置完成後の不具合発生減少に向けたモデル技術提案を行いました。製品の動作を再現したアニメーションをお見せしながら提案したところ、お客さまから共感を得ることができ、案件を獲得することができました。私が調査し、学んだ技術とアイデアがお客さまに対して響いた瞬間でした。
そして、お客さま先で実験的に装置モデルが設計で活用できるか実用性検証が始まりました。ここから、技術開発段階から実践レベルのモデル設計へレベルアップをめざして進むことになりました。
開発プロセスの学習と経験の積み重ね
お客さまの共感を得ることができ、案件を獲得したものの、私は設計を請け負った経験がなく、開発プロセスや仕事の進め方についてまったくわかりませんでした。しかし、上司が手を差し伸べてくださり、サポートをもらいつつ、お客さまとの定例会や仕事の進め方など、実際にプロジェクトを立ち上げながら知識と経験を積んでいきました。自ら定例会や実業務を経験することで、開発プロセスや仕事の進め方をより深く理解し、プロジェクト推進に対する自信をつけることができました。
期待値の高さによる苦戦
プロジェクト推進に対する自信を持ちつつ、モデル設計や検証を推進していましたが、お客さま先ではすでに既存製品の問題が発生しており、早急な対応が必要であるため、モデルベース開発への期待値が高まっていました。お客さまからの期待値の高まりは、私にとって大きなプレッシャーであり、さまざまな要求事項や期待値の高さに対して、苦戦していました。この時点で一人では期限に間に合わないほどモデルベース開発への要求事項は増大していました。また、この段階でのモデル設計は日々手探りで進めており、予想以上の時間がかかっていたため、設計スタイルの確立も課題となっていました。
チーム発足と成長
自分一人では対応が厳しいと感じたため、すぐにその旨を上司に相談したところ、私の要望に応えて、仲間を加えチームとしてモデル設計を行っていくこととなりました。上司の協力によりチームメンバーを集めてチームを発足しましたが、早く戦力になっていただく必要があるため、私はまずチームメンバーの教育に注力しました。教育方針は、基礎知識は社外トレーニングを利用して学んでもらいますが、モデル設計ツールに慣れるには実践が一番と考え、すぐに案件業務に従事して、実践経験を積んでもらいました。当初教育に注力したことやチームメンバーの覚えが早かったおかげで即座にチームとしてモデル設計を行う体制を整えることができました。そして、このチームで業務をこなしていくにつれて、規模の大きいモデルにも対応することができるようになり、チームとして成長していることを実感しました。
チームによる設計スタイル確立
経験を積むことで私たちのチームは、以前一人では対応できていないようなお客さまの増大していた期待にも応えることができるまでに成長していました。一人では到達できなかった成果を、チームの協力と努力によって実現したのです。さらに以前までは手さぐりで進めていたモデル設計に必要な設計情報の整理やモデル用設計仕様書の作成など、設計スタイルを確立できるようになりました。
確立した設計スタイルを活用した提案
設計スタイルの確立によって、私たちは効率的かつ品質の高いモデル設計を実現できる自信を深めました。そして、これからもモデルベース開発の有効性や成果をアピールしつつ、日々新たなモデル設計技術を学習し身に着け、他のお客さまが抱えている多くの課題にチーム一丸となって対応していきたいと考えています。
2024年12月
株式会社 日立情報通信エンジニアリング
エンジニアリング事業部 第4本部 第2部 山口 大輝
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