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スマートフォンの時代にPHSを発売すること

ネットワーキング事業部 UCシステム本部 松下 香緒理

キーワード

  • #スマートフォン
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ネットワーキング事業部UCシステム本部の松下です。2023年4月からPBX(構内電話交換機)を中心とした音声コミュニケーションシステムの製品企画を担当しています。今回は、同年7月に当社から販売開始したPHS新機種の発売経緯についてお話ししたいと思います。

PHSからスマートフォンへの移行が進む

2023年3月をもって公衆PHSのサービスが終了しました。日立グループとして1995年頃から取り扱いを始めたPHSですが、時代とともにコミュニケーションは多様化し、端末としてPHSが選ばれることは段々と少なくなり、最近ではすっかりスマートフォンへの置き換わりが進んできています。世代によっては、PHSの端末を実際に見て触れたことがない方もいるのではないでしょうか。 ただ、このような大きな流れの中の2023年7月、当社はPHSの新機種として「HI-D10PS」「HI-D11PS」の販売を開始しました。

日立 事業所用デジタルコードレス電話システム「HI-D10PS」(写真左)「HI-D11PS」(写真右)の外観写真

日立 事業所用デジタルコードレス電話システム「HI-D10PS」(写真左)「HI-D11PS」(写真右)の外観写真

なぜ今、新しくPHSを発売するのか?

すっかりスマートフォンが定着した時代に、新しくPHSを発売するのは時代に逆行しているようで、「なぜ今?」と思われる方もいるかもしれません。個人の端末としてはスマートフォンが普及し、PHSを持っている方は既にそれほどいないかと思いますが、ビジネスで採用される端末となると少し様子が変わります。ハイブリッドワークなど働く環境が大きく変化する中で、確かに企業でもスマートフォンの採用が加速しているのですが、その中でもお客さまによっては「PHSは有効なコミュニケーションツール」として未だ根強く選ばれています。医療・介護施設や工場などを持つお客さまです。

医療・介護や工場など、専門的な業種のお客さまのニーズに応える

当社は全国の通信パートナーさまを通じて、幅広い業種のお客さまにPBX関連製品を提供していますが、医療・介護施設や工場などを持つお客さまからは「PHS販売を継続してほしい」というお声を多くいただいていました。このような業種のお客さまでは、音声通話に特化し、緊急時ただちにコミュニケーションが取れることや、端末が頑丈・安価で身体を動かすことの多い作業時の故障対策ができることなどがPHSの価値として支持されています。
1台の端末でさまざまなアプリケーションを利用できることがスマートフォンの魅力ですが、PHSのように音声通話の端末としてシンプルであることもまた、お客さまの環境によってはニーズとなり、我々メーカーとして応えていく必要がありました。

生産継続の困難を乗り越えて、新たにPHSを発売

2020年後半から世界に広がった半導体不足問題ですが、数多くの電子機器の例に漏れず、当社のPHSにも影響が及びました。部品を安定して入手することができなくなり、生産が困難な状況に陥ってしまいました。前述したようなスマートフォンへの置き換わりの状況がある中で、当社として今後もPHS製品を生産していくのかを判断することとなりました。しかし、そこでも改めて通信パートナーさまを通じたお客さまの根強いニーズの声をいただき、設計・製造を刷新した上でPHS生産の継続決定へと至りました。新機種では製品の安定した供給を実現するために、複数あるモデルの筐体を共通化し、部品は汎用品に差替えるなど再選定した上でサプライチェーンを見直しています。 そうして2023年7月、無事に新機種の販売を開始することが叶いました。

新しい技術を取り入れること、従来の技術を安定して提供すること、どちらも大事

新しい技術を取り入れて新製品を出すことと同じように、PHSのような従来製品を安定してお客さまに提供していくことは、どちらもメーカーとして重要な役割です。この先、変わりゆくニーズの中でも、その都度お客さまや通信パートナーの皆さまの声を直接聞かせていただき、「お客さまが求めているものは何か」、「我々メーカーとしてできることは何か」に向き合っていけたらと思います。
医療現場におけるPHSの活用事例については別記事「構内無線通信の歴史(第1回)」に記載されていますので、ぜひそちらも合わせてご覧ください。

2023年9月
株式会社 日立情報通信エンジニアリング
ネットワーキング事業部 UCシステム本部 松下 香緒理