ページの本文へ

Hitachi

IoTエッジにおける効率的なデータ制御

エンジニアリング事業部 IoT Edge技術開発本部 部長代理 佐々木 隆弘

キーワード

  • #ネットワーク
  • #IoT-Edgeネットワーキング
  • #データ制御
  • #エッジコンピューティング
株式会社日立情報通信エンジニアリングの佐々木と申します。
私は「IoT-Edgeネットワーキング」の開発を担当しており、IoTシステム設計やIoT機器の設計を行っております。
今回は、IoTシステムにおけるデータの扱いについて、IoTシステムの構成や処理効率から見た「データ制御」のお話をさせていただきます。

IoTシステム基本構成:上位サーバーによるデータの集中管理

IoTシステムは、クラウドやデータセンターの上位サーバー、ネットワーク、エッジデバイス/センサーから構成され、エッジデバイス/センサーにて採取した計測データを、ネットワークを介して上位サーバーに集約、上位サーバーにてデータの加工や蓄積、利活用を行う形が基本となります。

IoTシステム基本構成

採取するデータ量や種別が少ない間はこの構成/方式で問題ありませんが、対象のデータ量や種別が増えたり、上位サーバーからエッジ側設備/機器への制御指示が必要になってくると、次のような課題が出てきます。
・上位サーバーにおける負荷増加
・ネットワークにおける負荷増加
・上位サーバーとエッジ間のリアルタイム性不足
例えば、次のような問題が発生する可能性があります。

課題解決:エッジコンピューティングによるデータ制御

多くの場合、全ての採取データを上位サーバーにて集中管理する必要はなく、エッジ側でまず利活用に必要なデータに絞りこみ、かつ利活用しやすい値やフォーマットに整え、上位サーバーへ蓄積する方がデータ制御上効率的です。
また、リアルタイム性の課題により、動作上問題のある設備/機器制御の場合は、上位サーバーにて行っていたデータの分析/判定/指示などの処理の一部を、エッジ側に分散して処理することで解決できます。
このように、上位サーバーにて行っていたデータ制御の一部を、エッジ側にて行う方法が「エッジコンピューティング」と呼ばれる方式です。
一般的にエッジコンピューティングは、エッジ側にエッジサーバーを設置し、そこでデータ制御を行います。
前述した課題に対して、IoTシステムを次のような構成とすることで、さまざまなメリットを得ることが可能です。

エッジコンピューティングによるデータ制御例


それでは次に、エッジコンピューティングの適用例をいくつかご紹介します。

・アナログセンサーのデータ取得(データ1次加工)
アナログセンサーの出力は電圧値/電流値などの電気信号ですので、IoTにて利活用するためには、一旦A/D変換回路によりデジタル値へ変換を行い、その後、最終的な期待値に変換を行う必要があります。
さらにセンサー毎の特性補正・ノイズ除去も必要となり、センサー種毎に異なる変換処理(データ1次加工)が必要です。
多種にわたるアナログセンサーを用いてデータ収集する場合、エッジサーバーにてデータ1次加工することで、前述したメリットを得ることができます。

アナログセンサーデータ1次加工


・固有設備のデータ加工(データ1次加工)
設備の稼働データを収集する場合、稼働データの容量が比較的大きく、さらにデータ間に相互関係が有るケースが多くあります。このような設備データを収集する場合、エッジサーバーにてデータ1次加工することで前述したメリットを得ることができます。

固有設備のデータ加工


・映像による良品/不良品判定(エッジAI)
映像をAIにて解析し、製品の良品/不良品判定を行う場合、AIモデルと呼ばれる推論を実行し映像の解析を行います。
サーバーにて映像の解析を行う場合、エッジと上位サーバー間で容量の大きな映像の受け渡しが必要であり、サーバー負荷、ネットワーク負荷、上位サーバーとエッジ間のリアルタイム性が問題となる可能性が高くなります。
このようなケースにおいても、エッジサーバーにてAI推論実行することで問題を解決することができます。 

映像による良品/不良品判定(エッジAI)

まとめ

近年IoTシステムではAIを用いた故障予兆や効率向上、品質向上などへの応用も活発化しています。
これに伴い扱うデータの量も膨大なものとなってきております。
このような状況により、エッジコンピューティングへの期待はさらに高まると言われています。
当社のエッジデバイスマネジメントプラットフォームは、データ1次処理機能やエッジAI機能に加えて、インターフェース方式の異なるエッジデバイスを上位サーバーに繋ぐためのGW機能や、エッジデバイスの運用管理機能を有しており、エッジでのコンピューティングに適したプラットフォームとしてご提供させていただいております。
また、上位サーバーインターフェースに合わせたカスタマイズや、構造の特殊な収集データの1次加工処理エンジニアリングなど、さまざまなご要望にもお応えすることができますので、ぜひご活用いただきたくよろしくお願い申し上げます。

株式会社 日立情報通信エンジニアリング
エンジニアリング事業部 IoT Edge技術開発本部 IoT Edgeサービス開発センタ 第1G 部長代理 佐々木 隆弘