本記事でお伝えしたいこと
・IoTデータは取得する手段や方法、活用するエッジデバイス(センサーやカメラなど)によりさまざまなデータ形式がある
・IoTデータ利活用の観点では、IoTデータの形式統一やタグ付けを行い、データの一元管理をすることが重要
株式会社日立情報通信エンジニアリングの須賀田と申します。
「IoTデータ利活用のツボ」と題し、前回はエッジデバイスで取得したIoTデータを上位アプリケーションにつなげる「
IoTネットワーク」についてご説明いたしました。今回は、取得したIoTデータを上位アプリケーションで利活用するための「データ管理」についてご説明したいと思います。
IoTデータの取得方法について
IoTデータの取得はさまざまな方法があります、センサーを活用して温度データを取得するケースや、カメラを活用して撮像データを取得するケースなど、IoT導入の目的に応じて多くの方法を活用します。図1では主に製造などを行う工場で使われている方法を紹介します。
図1.製造工場におけるIoTデータ取得例
*1:PLC=製造設備を制御するコントローラ
製造工場においては、どれも一般的なデータ取得方法になりますが、データ利活用の観点では、集めたデータを「どのように貯めるか(IoTデータの蓄積)」がポイントになります。
IoTデータの「サイロ化」について
通常、図1のさまざまな方法を使ってデータを収集した場合、図2のような貯め方になることがあります。
図2.IoTデータの収集、蓄積における課題
図2の例ではデータ取得方法や活用するエッジデバイスによって「センサーデータのみ」「カメラデータのみ」といった、取得方法毎にデータが蓄積されます。これを俗に「データの『サイロ化』」と言います。データのサイロ化が起こる原因としては、取得方法や手段の違いによってIoTデータの「データ形式」が異なるために発生します。
IoTデータを取得、蓄積して、課題解決に利用するには、蓄積したデータに対しアプリケーションなどで分析、可視化を行うことが一般的ですが、蓄積したデータが先述した「サイロ化」の状態になっている場合、アプリケーションがデータを参照する箇所が分散しているため、分析しづらく、目的の分析ができない!といった状況になるケースがあります。データ利活用の観点ではデータの「サイロ化」は分析における課題となります。
製造ラインにおけるデータサイロ化の事例
データのサイロ化が起こる代表的な事例を紹介します。図3は工場の製造ラインを例にしたデータサイロ化発生のケースです。
図3.製造ラインにおけるデータサイロ化の事例
図3の製造ラインでは、ベルトコンベアで流れる製品に対して、流れ作業になっており、その工程は以下の流れになります。
A社製設備で作業実施→B社製設備で中間工程作業を実施→C社製設備で最終工程作業を実施→完成品となります。この製造ラインの設備データをIoTデータとして収集する場合、それぞれの設備(A社、B社、C社製設備)に実装されている「PLC」からIoTデータを取得します。ここでポイントとなるのが各設備に実装されているPLCの違いです。PLCはPLCの製造ベンダによりIoTデータの出力形式が異なります。製造ラインではA社、B社、C社設備で実施する作業内容が異なるため、設備の製造ベンダが異なることが多く、その設備に実装されているPLCのベンダも異なるケースが多くあります。異なるベンダのPLCから得たデータをそのまま蓄積すると、データ形式が異なるため「データの『サイロ化』」が発生します。
データのサイロ化を防ぐには
データのサイロ化を解決するには、アプリケーションで分析しやすいように取得したデータを整え、一元管理できるよう、データの一次処理を行うことが重要になります。一般的にはこのような処理を「ETL(Extract Transform Load)処理」と言いますが、IoTデータの場合、データを利活用するアプリケーションや、データを蓄積する方式などによって、一次処理する内容が決まります。
図4.一次処理によるIoTデータの一元管理
当社が提供するIoTエッジでは、現場に実装するエッジプラットフォームにIoTソフトウェアが実装されています。当社ではお客さまのシステムや活用するアプリケーションをヒアリングさせていただき、その環境にマッチしたETL処理を行うことで、取得したIoTデータの一元管理をご支援させていただきます。
2023年4月
株式会社 日立情報通信エンジニアリング
エンジニアリング事業部 エンジニアリング事業企画本部 販売促進部 専任部長 須賀田 勉
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