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OSI参照モデルの話(第1回)
〜7つのレイヤが奏でる思い〜

ネットワーキング事業部 シニアアドバイザ 森 隆

キーワード

  • #ネットワーク
  • #無線

OSI参照モデルとは

ネットワークとは遠く離れた二者の間で通信を可能とするためのものですが、音声、画像、ファイルなどのデータをいろいろな機器を経由して転送していくためには、一定の規則、ルールが必要となります。これを通信規約(プロトコル)といいます。そしてその通信規約はOSI参照モデルという名前で規定されています。通信の機能を7つの層(レイヤ(layer))に分類して規定しているので通称OSI7レイヤとも呼ばれます。
コンピューターが世の中に登場したときにはこうした通信規約がなく各メーカーはそれぞれで規約を独自に決めていましたが、1970年代になるとコンピューターの相互接続の気運が高まり統一された規約を決めようという動きが始まりました。こうしてこの7層のOSI参照モデルが1980年頃にISO(国際標準化機構)により標準として制定されました。この7つの層を次の表に整理します。

表1.OSI7レイヤ

この標準化によって各層毎に独立にプロトコルを検討することが可能となり、それがネットワーク技術の発展の大きな礎となりました。現在のインターネット技術の中でよく名前が登場するTCPは第4層だし、IPv6などは第3層、機器を接続する時に登場するMACアドレスなどは第2層に該当します。また先日ご説明した「電話線と光ファイバと無線と」は第1層の話であった、というような整理が可能となります。

OSI参照モデルに込められた思い

この手の標準化が決まる過程を考えると各国、各メーカーの事情や思惑もからんで長い時間を要するのが普通だろうと考えるのが自然です。しかしこのモデルについては少し違いました。OSI参照モデルについては関係する若手のエンジニアたちが一堂に会し、徹底的に議論して一晩で作り上げたという逸話があります。個々の利害を超えて全世界が通信することを可能とするために標準を作り上げようという若い情熱のなせる技だと思います。
各層の技術的な説明がちょっと堅苦しいと思われる方も多いと思うのでここで各層に込められた思いを私の感じるままに書いてみます。

表2.OSI7レイヤ

このように上位層は人々の思いの近くにあり、下位の層に向かうに従ってネットワークを構成する機器やケーブルなど実体のあるものに近づいていきます。これらの働きによって、人々はネットワークがどんな形をしていてその中をどんなルートで通信しているかなどを気にすることなく電子メール通信などのサービスを受けることが可能となります。下位の層は上位の層をサポートする働きをしています。これらの層はお互いに協力し合いながら皆様の思いの輪を広げているのです。
ネットワーク機器をご覧になるとたくさんのケーブルが接続されているのが見えると思います。

図1.ケーブル

そのケーブルの中には勿論みなさんの大切な伝えたい情報が流れているのですが、それをネットワークとして確実に伝えるためにこれらの7つの層もその情報に寄り添って、いつでも忙しく働いています。それはまるで白雪姫を囲む7人の小人たちを思い起こさせます。もしもケーブル1本1本の中に込められたこれらの思いを少しでも感じ取っていただけたら、ネットワークを提供する側として非常にうれしく思います。
次回はこのOSI参照モデルが当社の企業基幹ネットワーキングにどのように具体的に適用されているかをご説明したいと思います。

株式会社 日立情報通信エンジニアリング
ネットワーキング事業部 シニアアドバイザ 森 隆