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電話線と光ファイバと無線と

ネットワーキング事業部 シニアアドバイザ 森 隆

キーワード

  • #ネットワーク
  • #通信
快適なインターネット通信に欠かせないのが情報を伝える速度、すなわち伝送速度です。その単位は、bps(bits per second)であり、単位時間あたりに送受信できる情報量(bit数)で計算されます。本日は有線、無線の各種サービスにおける伝送速度の変遷をたどってみたいと思います。
伝送には大きく分けて加入者伝送と、中継伝送の2つの分野があります。
加入者伝送は加入者一人ずつに対して比較的短い距離(数km以下)で伝送します。数が多いことが特長です。接続方法としてはご存じのとおり、電話線、光ファイバなどの有線と携帯電話に代表される無線の2つがあります。
一方、中継伝送は日本の例でいうと県と県の間を結ぶネットワークであり、数はさほど多くはないですができるだけ速い伝送速度で長距離(〜100kmなど)を結ぶ必要があります。こちらは光ファイバが現在でも主流です。
これらの伝送速度の変遷を大まかですが次の図に示します。

◆1980〜1990年代

それまでの電話だけのサービスからデータ通信サービスが始まりました。加入者伝送ではすでに全国的に整備されている電話線を利用して、アナログモデム、INS64などのデジタル回線、そしてADSL技術が立ちあがりました。しかし電話線を使った伝送速度には数10Mbpsという限界が見えてきました。
日本国産技術と言われる光ファイバ通信が中継伝送で実用化されました。この頃、中継伝送としては世界相互接続の気運が高まって伝送速度が標準化され、それに合わせて速度は4倍ずつ向上していきました。
加入者伝送においては、インターネットの普及が始まりさらに速い伝送速度が期待されました。光ファイバは当初建設費用が高額なため不向きとされていましたが、この強い要望を受けて90年代末から電話線になり代わって光ファイバによる加入者伝送が立ちあがり始めました。
この時期、まだ無線技術は電話サービス中心で産声を上げた段階でした。

◆2000〜2010年代

中継伝送では伝送速度が10Gbpsに到達しました。光ファイバ伝送においては当初からこれが理論的に限界だと予想されていました。それを補う技術として波長多重技術(波長の異なる複数の光を多重して1本の光ファイバで伝送する技術)との組み合わせで伝送速度をさらに向上させました。
加入者伝送では光ファイバが急速に導入され始め、伝送速度として100Mbpsが本格的にサービス開始、その後1Gbpsさらには10Gbpsまで伝送速度は向上しましたが、さっそく光ファイバの限界速度に到達しました。
この間、無線による加入者伝送、つまり携帯電話サービスは光ファイバの伝送速度を目標にして急ピッチで成長していきました。

◆2020年代とこれから

無線は"5G"技術で加入者伝送として光ファイバ通信に並ぶ伝送速度まで到達しました。さらに現在、"Beyond 5G/6G"技術の検討も進んでおりさらなる向上が期待されています。
中継伝送の伝送速度は理論的に限界と見られていましたが、無線技術で培われた多値化技術を応用することでそれを超えてさらなる向上の可能性が開けてきました。すでに100Gbpsまで実用化されており、今後さらなる速度向上により有線・無線共通にネットワークの基盤を支えていきます。

みんなちがって、みんないい。

以上みてきたように、これらの伝送技術は時にはよきライバルそして時にはよき協力者として支え合いながら伝送速度の向上を推進してきました。それはこれらの技術が皆、快適で効率的なネットワークを実現したいという共通の目標をめざしているからです。
電話線と、光ファイバと、それから無線。みんなちがって、みんないい。
当社では数多くのエンジニアがこの有線・無線技術の進展の中においてそれぞれの技術・製品開発、そしてネットワークの構築・保守に携わってきました。そこで培った技術力と豊富な経験からそれぞれの伝送技術の特長をモノづくりの視点から熟知しております。これによりお客さまのご要望、使用条件に応じて最適な伝送技術とそのネットワーク構成をご提案させていただくことが可能です。ぜひお気軽にご相談をお待ちしております。

2022年8月
株式会社 日立情報通信エンジニアリング
ネットワーキング事業部 シニアアドバイザ 森 隆

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※編集・執筆当時の記事のため、現在の情報と異なる場合があります。編集・執筆の時期については、記事末尾をご覧ください。