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生成AIの進化から考える、これからの開発支援と人間の役割

エンジニアリング事業部 第3本部 第1部 遠藤 淳一

キーワード

  • #AI活用
  • #エンジニアリング
  • #ソフトウェア

はじめに

ソフトウェア開発を支える環境づくりに携わっている遠藤です。

GitHub Copilotなどの生成AIは、この数年で大きく進化しました。初期はコード補完や簡単な関数生成が中心でしたが、現在は自然言語で目的を伝えることで、コードを読み、修正方針を考え、実装やテストまで支援するAI Agentの活用へと広がっています。

私自身、この変化を現場で強く実感しています。従来のAI活用では、調べる範囲(探索範囲)が少し広くなると、途端に的外れな提案が増え、使い物にならないことが多々ありました。単純な補完はできても、複数ファイルにまたがる文脈までは追いきれなかったのです。

本記事では、こうした進化によって開発支援がどのように変わりつつあるのか、そしてその中で人間にどのような役割が求められるのかを、私の経験も交えて考えます。

開発支援の対象は「書く」から「理解する」へ

従来、生成AIは「コードを書く作業」を支援するものとして捉えられていました。しかし今では、コードの意図の説明、処理の流れの整理、影響範囲の推測、テスト観点のたたき台作成など、開発の前後を含めた支援へと進んでいます。

中でも変化を実感しやすいのが、「理解する」ことへの支援です。

ソフトウェア開発では、新しいコードを書くこと以上に、既存のコードや設計の背景を把握し、安全に変更することが重要です。特に、長年保守されてきたシステムやレガシーコードでは、仕様書が古い、設計意図を知る人が限られているといった事情も少なくありません。

生成AIは、このような場面でコードや関連情報を整理し、全体像をつかむための補助者として力を発揮します。すべてを正しく理解できるわけではありませんが、開発者の代わりではなく理解を促す支援役として活用することで、人手不足や後継者不足が課題となる現場を支える可能性があります。

AI Agentができること、できないこと

こうした「理解する」支援の広がりを象徴するのがAI Agentです。

AI Agentは、与えられた目的に対して作業を整理し、コードを確認し、修正案を考え、実装やテストを進め、結果を報告するまでの一連の流れを支援できます。私が驚いたのは、AI Agentの登場によって精度が大きく向上したことです。以前は人間が関連箇所を指定しなければならなかったのに対し、今では自律的に必要な情報を探し出し、判断しながら作業を進めてくれるようになりました。かつて「探索範囲が広いと使えない」と感じていた壁が、確実に低くなっています。

一方で、生成AIを過信することはできません。一般的な実装パターンには強くても、組み込み開発、製品固有の制約、独自ドメインの知識まで十分に理解できるとは限りません。

ここで私が痛感したのが、独自性の高い内容ほど、LLMが持つ一般知識だけでは足りないという点です。ハードウェア制約やリアルタイム性、製品ごとの設計思想といった知見は、コードだけでは捉えきれません。だからこそ、設計書のような質の高い情報をいかにLLMへ与えるかが、成果を大きく左右します。私の経験では、良い設計情報を渡したときと渡さないときとで、AI Agentの提案の実用性はまるで別物でした。例えば、コードだけを与えた場合には一般的な修正案にとどまりましたが、設計上の制約やレビュー観点を併せて与えることで、実際の製品条件を踏まえた、より実用的な提案が得られました。

AIは、こうした背景や制約を人間が整理して与えて初めて、実務で頼れる存在になります。

これからの開発者の役割

この変化の中で、人間の役割が小さくなるわけではありません。むしろ、より重要な部分へ移っていくと考えています。

これからは、すべてのコードを手で書くこと以上に、何を作るべきかを決めること、設計の妥当性を判断すること、品質や安全性を見極めることの比重が高まります。開発者には、目的を言語化し、AIに適切な情報と指示を与え、出力を評価する力が求められます。

この点で私が有効だと感じているのが、レビュー観点や判断基準を、AI Agentが参照できる「SKILL」として定義しておく方法です。

専門家が持つチェックの勘所をあらかじめ「SKILL」として与えておくと、AI Agentは一般論ではなく、私たちの組織固有の観点でコードをチェックしてくれます。ベテランが暗黙的に持っていたレビューの勘所を明文化し、組織で共有できることには、属人化の解消という意味でも大きな手応えを感じています。

人間がPilotとして方向を示し、AI AgentをCrewとして活用する。そうした役割分担が、これからの開発のあり方ではないでしょうか。

おわりに

生成AIは、開発者の代替ではなく、開発者の力を拡張する存在です。AIが自律的に動く時代になっても、進むべき方向を決め、質の高い情報や観点を与えるのは人間です。

特に、組み込み開発や独自ドメインのように、長年の知見や現場で培われた判断が重要な領域では、人間の価値はむしろ高まります。生成AIをうまく活用しながら、人間はより重要な判断に集中する。それが、これからの開発支援と人間の役割の一つの姿だと考えています。

もちろん、生成AIは万能ではなく、情報の取り扱いにも注意が必要です。

適切に活用すれば非常に頼もしいパートナーになると感じています。

あなたの現場では、生成AIにどんな役割を任せますか?

2026年10月
株式会社 日立情報通信エンジニアリング
エンジニアリング事業部 第3本部 第1部 遠藤 淳一


※編集・執筆当時の記事のため、現在の情報と異なる場合があります。編集・執筆の時期については、記事末尾をご覧ください。