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株式会社日立情報通信エンジニアリングの三宅と申します。
私は情報通信や産業分野などのハードウェア設計に長年携わっており、特に最近は電力系システム向け通信/制御機器の開発やモビリティ向け画像識別機器の開発に取り組んでいます。市場ニーズに応える製品を開発するには、用途や使用環境に適した機能・信頼性を見極めることがとても重要です。
その中で私たちが取り組んだ「システム構成提案」と「デバイス移行提案」の2つの事例についてご紹介します。
1つめの事例としては、ヤマハモーターパワープロダクツ株式会社様と開発しました「物体検出向けステレオカメラ基盤システム」についてです。
本システムはゴルフカーに搭載されて、ステレオカメラの画像を解析して、進路上の人や障害物を検知して自動的に減速や停止を実現するものです。その画像認識装置としては高速リアルタイム処理を可能とする最適なハードウェアとソフトウェアを搭載する必要がありました。
私たちはこの設計課題に対して検討を重ねて、
@ハードウェア・ソフトウェアのバランスを柔軟に対応できる構成
Aステレオカメラから上位システムへのリアルタイム画像転送に最適なOS/通信方式
の2つを解決することより、物体検出向けステレオカメラ基盤システムを実現しました。
システム構成を次の図に示します。
ステレオカメラからの画像データに対して高速処理が必要となる調整処理、補正処理などを前段のFPGA(プログラム可能なゲートアレイ)にて行い、微調整など柔軟な処理が必要となる認識処理をソフトウェアにて実現するという構成を採用してハードウェア・ソフトウェアの両者の特性を生かしたリアルタイム処理可能でかつ柔軟性を有する構成とすることができました。
2つめのデバイス提案の具体例としては、専用カスタムICの代替品への移行設計についてです。
こうしたケースにおいては
@互換性:同一の機能・性能を実現すること
A実装条件:現行品に搭載可能であること
B低コスト:現行品と同等もしくはそれを上回る低コスト化
などのいくつものご要望があります。
これらについて対応するために、当社では現行品の設計における動作仕様、電気的特性、信号波形などを確認した上で、現行品と互換性を確保した製品を再設計し、試作・量産試作品の提供、お客さま環境での評価・検証までの一連の開発作業をワンストップで対応いたしました。
具体的な事例を次の図で説明します。
本事例ではお客さまがある製品でご使用の専用ICが生産終了となりその製品を維持のために別なICに交換することが必要となったケースです。私たちはこの専用ICの仕様、電気的特性、信号波形を調べ上げてそれと完全に同じ動作をする回路を複数の汎用ICの組み合わせで経済的に実現しました。さらにそれをお客さまの製品の実装条件にあうようにフットプリントを合わせた2cmほどの子基板にコンパクトに実装することができました。
以上の事例に示したように、私たちは無線・画像・高速伝送技術をコア技術として、
@最新技術(IoT、5G、AIほか)を活用した新製品開発
A競争力維持のために必要となるコスト低減・信頼性改善
B量産製品の事業継続に必要となる製品維持設計
などに対して、要件定義から試作・量産、評価まですべての工程をワンストップで対応することが可能です。
今回ご紹介した事例は代表的なケースですが、実際にはお客さまの製品は多岐にわたりご要望も千差万別です。当社はさまざまなご要望に対してできる限り応えられるように今後もハードウェア・ソフトウェアの設計技術に磨きをかけて参りますので、お悩みの段階からぜひお声がけいただければ幸いです。
以上が、当社が提供する製品開発向けワンストップ型エンジニアリングの事例紹介となります。今後もさらに理解を深めていただけるよう、具体的な事例を紹介していきたいと思います。ありがとうございました。
2022年7月
株式会社 日立情報通信エンジニアリング
エンジニアリング事業部 IoT Edge 技術開発本部 第1設計部 部長 三宅教正
※編集・執筆当時の記事のため、現在の情報と異なる場合があります。編集・執筆の時期については、記事末尾をご覧ください。