ウェアラブルなどのIoT向け省電力デバイスや分子レベルを取り扱うバイオテクノロジー分野では、ピコアンペア(pA)オーダーの微小電流を精度良く測定する技術が求められます。
日立情報通信エンジニアリングは、微小電流を容易に測定できる技術をご提供します。
低消費電力LSIやセンサーの待機電流はナノアンペア~ピコアンペア(10-9~ 10-12アンペア)オーダーであり、短時間で精度よく測定することが必要とされます。また、微粒子モニタリングでは、ピコアンペア(pA)オーダーの微小な電流の差を利用して識別するため、微小電流測定技術が必要とされています。
しかし、このオーダーの微小電流測定には、ノイズ、温度(環境変動)、測定安定化の課題があり、測定器にはさまざまな対策が施されていますが、大型/高コストになる傾向があります。
(A) ノイズ
フロアノイズ、放射ノイズが電流測定の精度に大きな影響を与えます。
(B) 温度(環境変動)
測定ボードの温度変化によって測定アンプのゲインが変化し正確に測定できなくなります。
(C) 安定化時間
ピコアンペアレベル微小電流測定では、測定対象物のインピーダンスや測定対象物までのケーブル長、測定用アンプのR/C成分により測定開始までのセトリング時間が長くなることがあります(測定対象物まで配線長が長い場合は配線長に比例して変化します)。
困難だったピコアンペア(pA)オーダーの電流測定を1ボードにて小型/低コストで実現しました。
この微少電流の測定技術を適用することで微粒子モニタなど次世代センシングシステムへ応用が可能です。
ピコアンペア電流測定
リファレンスボード
ピコアンペア電流測定リファレンスボード回路構成
測定レンジ | ±10nA(入力電圧±0.5V) |
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測定精度 | 1pA(rms) @ボード単体,DC測定 |
分解能 | 78fA |
測定周期 | 20us |
周波数特性 | 3KHz @Cs=2nF |
ADC | 18bit |
サイズ | 140mm(H) X 125mm(W) X 20mm(D) |
本ボードは、測定レンジ±10nAでの微小電流を20μs周期で測定が可能です(2チャネル同時)。
また、18bitADCにより78fAの分解能で測定電流をデジタル化します。
今まで困難であったpAレベルの識別ができることで、微小な電流差を利用したアプリケーションの実現、および半導体素子特性のより詳細な評価が可能となります。
本ボードをリファレンスとして、お客さまのシステムにマッチした微小電流測定ボード、および測定環境をご提供します。
ピコアンペアレベルの微小電流測定を可能にする技術を紹介します。
回路構成
高抵抗TIA+Bufferの構成で電流ー電圧変換
ピコアンペア電流測定回路構成
ノイズを考慮した基板設計(高インピーダンス信号の基板内層シールド構造など)、測定対象物までのノイズシールドの採用により、ピコアンペア(pA)オーダーの測定を可能にしました。
<測定限界>
ダイオード順方向特性(VF-IF)を測定した結果を図1に示します。1pAまで測定精度が保たれています。
図1 測定限界調査結果
TIA(Trans-Impedance Amp)の温度変化で発生するオフセット成分を、独自のオフセットキャンセル回路により自動補正を行います。測定者は温度とデータの関係を気にすることなく測定できます。
<温度補正効果>
温度補正機能により、電流誤差を1pA以下に抑えることができます。
図2 温度補正効果
高速動作回路(プリチャージ回路)を搭載する事でセトリング時間を短縮します。
<安定化効果>
Wait時間を1/4(45ms)に短縮し、測定の高速化が図られます。
図3 高速動作回路適用効果
微小電流測定に関連した各種サービスをご提供します。
No. | 項目 | お客さまからの インプット |
サービス内容 | お客さまへの アウトプット |
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1 | 回路設計 | 機能・性能要求仕様書 |
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2 | 評価ボード製造 | 回路図、 ボード実装案 |
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3 | 測定系コンサルタント | 機能・性能 目標スペック |
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従来の蛍光反応を使わずに、ナノスケールの化学構造を直接読み取る次世代DNAシーケンサーに微小電流測定技術を適用しました。(分野:医療、農業)
ナノサイズの穴を通過するDNAを、ピコアンペア(pA)レベルの電流差で検出および識別する実証ボードです。
波形例
DNA検出イメージ
ピコアンペア(pA)オーダーの微小な電流変化を高速&正確に測定、記録します。
多チャネル 次世代DNAシーケンサー実証ボード概要
多チャネル、同時測定を可能にし、測定時間を大幅に短縮します。
測定データはUSB通信によりPC上のソフトウェアで解析処理が可能です。