はじめに
「注目の『プラットフォームエンジニアリング』について考えてみた」第2弾です。
プラットフォームエンジニアリングって、要するにプラットフォームを作るエンジニアリングのことですよね。でも、プラットフォームって最近出てきたわけではないのに、なぜ今こんなに注目されているのでしょう?
今回は「なぜ今?」という視点で考えてみたいと思います。
プラットフォームエンジニアリングとは
プラットフォームエンジニアリングとは、開発者が効率的に作業できるように開発環境やツールを提供するための手法やプロセスをさします。プラットフォームエンジニアリングでは、具体的には、以下のようなものを提供します。
・開発環境の自動化
開発者が簡単に環境を構築できるように、セルフサービスのツールや自動化されたプロセスを提供
・内部開発者プラットフォームの構築
開発者がインフラの詳細を気にせずアプリケーションの開発に集中できるように、統合されたツールチェーンやワークフローを提供
・効率的なコラボレーションの促進
開発プロセス全体の効率を向上させるために、異なるチームや部門間での協力を円滑にするプラットフォームを提供
開発環境の自動化、統合されたツールチェーンやワークフロー、開発プロセス全体の効率向上など。確かにどれも開発者の立場からすると、ぜひ!と思うものばかりですね。でも、どれもプラットフォームエンジニアリングという言葉が注目される前からずっと望まれているものばかりではないでしょうか。なぜ今なのでしょう?
プラットフォームエンジニアリングが今、必要とされている要因
プラットフォームエンジニアリングが必要とされている要因はいくつかあるようですが、主要なところでは以下のようなものが挙げられます。
・クラウドコンピューティングの普及
・マイクロサービスアーキテクチャの導入
・DevOps、CI/CDの実現
クラウドコンピューティングやマイクロサービスアーキテクチャにより柔軟な開発ができるようになりましたが、一方で、ソフトウェアは複雑化しています。デジタルトランスフォーメーションの加速により開発も短期化しており、開発者の負担が高まっていることに疑いの余地はないでしょう。
なるほど。開発者の負担が高まっているから、プラットフォームエンジニアリングで開発環境の自動化、統合されたツールチェーンやワークフロー、開発プロセス全体の効率向上を図ろうということなのでしょうか。いやいや、前も大変だったし、同じくらい切望していた!という声が聞こえてきそうです。となると、DevOps、CI/CDの実現というところがポイントとなりそうです。
DevOpsは、開発を意味するDevelopmentと運用を意味するOperationsを組み合わせた言葉で、開発チームと運用チームの間の協力を促進し、ソフトウェアの開発から運用までのプロセスを効率化することを目的とするものです。CI/CDは、ソフトウェア開発における「継続的インテグレーション(Continuous Integration)」および「継続的デリバリー(Continuous Delivery)」のことで、ソフトウェアの開発、テスト、リリースのプロセスを自動化し、効率化するための手法のことです。DevOpsが効率向上をめざす概念で、CI/CDはDevOpsを実現するための手法の一つとなります。
DevOpsは開発と運用が一体となってプロセスの効率化を図るという意味で、プラットフォームエンジニアリングの目的である「効率的なコラボレーションの促進」と同じものをめざしているようです。しかし、その実現にはフェーズ毎に適切な手法を選択し、構築と運用が必要となり、本来の開発業務とは異なる部分での負担も発生してしまいます。そこで、「開発環境の自動化」や「内部開発者プラットフォームの構築」といったプラットフォームにより、開発者の負担を軽減しようということなのだと思います。
プラットフォームエンジニアリングのコミュニティで、Platform tooling landscapeが示されています。これを見ると、プラットフォームを実現するためのさまざまなツールがあることが分かります。開発者の負担が高まってきていることに加え、これらツールを活用することでプラットフォーム構築が実現可能となってきたことが、プラットフォームエンジニアリングが今注目されている理由なのかなと思います。

出典:Platform tooling landscape(URL:https://platformengineering.org/platform-tooling)
おわりに
プラットフォームエンジニアリングがなぜ今注目されているのかについて、考えてみました。
開発者が置かれている状況の変化と技術的な進歩が、開発者のためのプラットフォーム構築という動向となり、プラットフォームエンジニアリングが注目されている理由の一つになっているのではないかと思います。プラットフォームを構築するというとすごくハードルが高いことのように感じますが、「
名乗ってみた編」のように、まずは身近なところから取り組んでいくことがプラットフォームエンジニアリングの第一歩なのかなと思います。
2025年2月
株式会社 日立情報通信エンジニアリング
エンジニアリング事業部 第1本部 第3部 松下 笑
※編集・執筆当時の記事のため、現在の情報と異なる場合があります。編集・執筆の時期については、記事末尾をご覧ください。