わたくしは入社34年目、一貫して品質保証業務に従事させていただいている品質保証本部員です。入社時(’88)は現在とは異なり品質保証本部とは言わず、検査部の呼称が主流でした。ものづくりへの期待感から検査部への配属は少々ショックであったことを記憶しています。
当時はバブル全盛に向かう途上で世の中の景気やマインドもすべてが上昇志向で、銀行系を中心としたIT化への設備投資は凄まじく、私が従事していた大型ディスク装置(DASD)の開発、生産は飛ぶ鳥を落とす勢いでありました。
当時は大きな工場に巨大な生産ラインを構築し、多くの人が現場に立ち開発、生産、検査のオペレーションを昼夜交替を含めて実施しておりました。現在のようなスマートな形ではなくオペレーター全員がカッチカチの職人といえるような知識と技術を持って、システムを導入されるお客さま、またその先にいる我々のような最終ユーザーに安心・安全にご利用いただけるように1bitたりともエラーを見逃すまいと尽力し出荷していました。
日立のものづくりに対する高品質、高信頼性の確保に向けての必要なコストは一歩たりとも譲歩しない、高品質、高信頼性が何よりも優先されるというマインドを目の当たりにし現在の私の品質保証業務に対する姿勢の根幹を築かせてくれたと思います。

お客さまのニーズ、半導体技術の進化、SCMのグローバル化など、時代が進むとともにものづくりの様態も大きく変革するとともに信頼性に対する要求事項もISOの導入などを皮切りに、職人による信頼性の確保(言ったら属人的な)から標準化された思考・プロセスを構築し、かつDX化による定量的な開発・生産・検査、およびコンプライアンスへのより明確なエビデンス・トレーサビリティへの対応が加速されています。
日立の社会インフラ事業の一翼を担う当社もレガシーなものづくり事業に加え、IoT-Edgeネットワーキング、SD-WANといった仮想化ベースのネットワーキング、さらにはセキュリティなどといったよりお客さまニーズに沿った製品・サービスなどへ事業変革が進みつつあります。わたくしは製品のカタチは変わっても品質保証の基本的な考え方は入社当時から全く変わっていないと考えています。昭和の時代に培ったものづくりへの知識・技術をベースに、現在の令和や将来に向かい、新たな知識・技術の習得や平成生まれの若いメンバーによる組織・思考を活性化し、時代に要求される高品質、高信頼性を貪欲に求めていきます。