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サービス維持を見据えたモノづくり!
〜見えない仕組みが価値を支える〜

エンジニアリング事業部 第1本部 第3部 橋 利正

キーワード

  • #エンジニアリング
  • #ソフトウェア

はじめに

今回は、システム開発の中ではどちらかと言うと地味に見られがちな「サービス維持機能」に注目してお話ししたいと思います。 普段はサービス提供機能の陰に隠れがちな存在ですが、実はサービスの価値や安定性を大きく左右する重要な役割を担っています。

サービス維持機能とは?

「サービス維持機能」という言葉は、私が入社してシステム開発に携わるまで耳にしたことがなく、最初は「維持」という言葉の響きから、どこか地味で裏方のような印象をもっていました。
しかし実際には、サービス維持機能とはシステムの性能・信頼性・可用性・運用性といった、ユーザーが安心して使い続けられる状態を支える重要な要素です。
一言でまとめるなら、サービス提供機能が「何ができるか」を示すものだとすれば、サービス維持機能は「どれだけ安定して、快適にできるか」を示すものと言えます。
もう少し身近な例でいうと、飲食店では、「注文を受ける」、「料理を提供する」といった部分がサービス提供機能、「注文から提供まで10分以内に行う」といったサービスの質や安定性に関わる部分がサービス維持機能にあたります。

サービス維持機能を考えなかったら?

先ほどの飲食店の例で、もしサービス維持機能をまったく考えなかったとしたらどうなるでしょうか。
「注文を受ける」、「料理を提供する」といったサービス提供機能さえ満たしていればよい、という考え方であれば、注文を受けてから必要な食材を買いに行き、そこから調理して提供する、という流れでも、形式上はサービス提供機能を満たしていることになります。
しかし、料理が提供されるまでに1時間もかかったらどうでしょう。その店を利用した客は満足するどころか、「もう二度と来たくない」と感じるはずです。
このように、サービス提供機能だけでは不十分で、サービス維持機能があってこそサービスとしての価値が成立するのだと思います。
これは、私が長年携わってきたモバイル通信向けシステムのソフトウェア開発でも強く実感してきたことです。
例えば、「〇〇秒以内に接続できること」、「△△台同時に接続できること」といった2つのサービス維持機能を同時に満たすことが難しく、接続台数が増えると応答が遅くなるという事象が発生したことがありました。
その際は、原因を解析し、処理の見直しによって対策を行いましたが、もしこれらのサービス維持機能が明確に定義されていなければ、そのままシステムがリリースされ、「接続が遅い」といったクレームにつながっていたかもしれません。

サービス維持機能はどこまで考えるべきか?

サービス維持機能は、システムの性能・信頼性・可用性・運用性など幅広い領域を含み、考えようと思えばいくらでも増やせるのが特徴です。
そのため、すべてを網羅しようとすると、時間もコストも際限なく膨らんでしまいます。
ここでは、サービス維持機能を設計するうえで、特に重要となる視点をいくつか紹介します。
優先順位を明確にすること
サービス維持機能は多岐にわたるため、すべてを最高レベルで満たそうとすると開発コストや期間が現実的ではありません。開発するシステムの目的や利用者のニーズに合わせて、何を優先すべきかを明確にすることが重要です。
飲食店を例にすると、ファストフード店では提供スピードが最優先で、「注文から提供まで5分以内」といったサービス維持機能が重視されます。一方、高級レストランではスピードよりも料理の品質を重視されるため、「注文から提供まで20分以内」といった基準でも十分に許容されるかもしれません。
想定外を想定すること
サービス維持機能は、通常時だけでなく、ピーク時や障害発生時のふるまいも含めて定義することが重要です。
飲食店を例にすると、ランチタイムなど客が集中する時間帯には料理の提供が遅れるリスクがあります。そのため、「ランチタイムにはアルバイトを1人増やす」といった対応もサービス維持機能の一部と言えます。
継続的に評価できるようにすること
サービス維持機能は定義して終わりではなく、それらが実際に守られているかを継続的に評価できる仕組みを整えることも欠かせません。その仕組みとして役立つのがオブザーバビリティツールです。オブザーバビリティツールでは、メトリクス、ログ、トレースなどを活用することで、システムの状態を可視化し、サービス維持機能がどの程度達成されているかをリアルタイムで確認できます。オブザーバビリティツールの詳細はここでは割愛しますが、興味があれば「メトリクス」、「ログ」、「トレース」などのキーワードでしらべてみると理解が深まります。

まとめ

今回はサービス提供機能とサービス維持機能を飲食店の例に置き換えて紹介しましたが、あらゆるものごとはこの2つの視点に分けて考えることができるのではないかと思います。
日常生活の中でも、「これはサービス提供機能かな?それともサービス維持機能かな?」と意識して考えてみると、普段は見過ごしがちな支える仕組みが、実はとても大切な役割を果たしていることに気づかされるかもしれません。


2026年3月
株式会社 日立情報通信エンジニアリング
エンジニアリング事業部 第1本部 第3部 橋 利正


※編集・執筆当時の記事のため、現在の情報と異なる場合があります。編集・執筆の時期については、記事末尾をご覧ください。