はじめに
こんにちは。エンジニアリング事業部 第5本部 Edge AIセンタ 福島公洋です。
近年の急速なAIの進化と利活用により、国力を左右するものとして世界的なAI開発競争が起きています。このような中、2025年は日本政府のAI戦略が大きく前進した一年であったことをご存じでしょうか。
日本は諸外国と比べAI開発と利活用が十分に進んでいるとは言い難く、多くの国民がAIに対して漠然とした不安を感じています。
そのような現在の状況を打破するべく、日本政府は「イノベーション促進とリスク対応の両立」を推進する政策に舵を切り、日本における初の包括的なAI推進法であるAI法を成立、公布しました。
本blogでは、「世界で最もAIを開発・活用しやすい国」をめざす日本政府の動向と、想像される近未来の状況について述べたいと思います。
AI法とは
人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律(AI法)は、日本における初のAI制度に関する法律として、2025年6月4日に公布され9月1日に全面施行されました。
基本理念として、AI関連技術の基礎研究から活用までを総合的かつ計画的に推進し、適正な研究開発・活用のための透明性を確保すると定めています。
また、内閣総理大臣を本部長とし全ての国務大臣を構成員とするAI戦略本部の設置、研究開発・活用の推進のために政府が実施すべき施策の基本的方針「人工知能基本計画(AI基本計画)」の策定、などを定める内容となっています。
政府は世界のモデルとなる法制度を構築することで、AI技術によるイノベーション促進とリスク対応を両立させ、世界で最もAIを開発・活用しやすい国をめざす、としています。
AI基本計画とは
前述のAI基本計画は、AI法に基づく国家戦略として位置づけられたAIの研究開発・活用を促進するための基本的な計画です。
AI戦略本部における議論を経て2025年12月23日に閣議決定された、AI法に基づく初の政策文書となります。
AI基本計画では、「イノベーション促進とリスク対応の両立」「アジャイルな対応」「内外一体での政策推進」の3原則と、「AIを使う」「AIを創る」「AIの信頼性を高める」「AIと協働する」の4方針が掲げられており、具体的な取り組み内容についても言及されています。
想像される近未来の状況
AI基本計画が施行されると、AIを取り巻く環境は劇的に変わっていくことが想定されます。
ここでは、4つの方針に示されている内容を基に、近未来の状況を私見も交えて想像したいと思います。
1.「AIを使う」の近未来
世代を問わずほとんどの国民が「AIをまず使ってみる」という意識が醸成され、AIが日常的にさまざまな局面で利活用される。
政府や地方自治体での業務においては積極的にAIが利活用され、医療・金融・教育・防災・農林水産・インフラなどのさまざまな分野で実証実験を開始する。
中小企業に対するAI導入補助金により大企業や大都市だけでなく地域を支える産業へ幅広くAIが導入される。
防衛力の抜本的強化やフィジカルAI事業への導入支援など、さまざまな巨大プロジェクトが立ち上がる。

2.「AIを創る」の近未来
海外技術に頼ることなく、日本が独自にAI研究開発を強化し利活用基盤を増強・確保するため、AIインフラ整備(計算資源・半導体の開発および供給、データセンターおよびクラウド環境整備、通信ネットワーク構築、安定的な電力供給体制など)が推進される。国内外から優秀なAI研究者・開発者が確保される。
「フィジカルAI」「AI for Science」「新薬開発AI」の3分野は日本の勝ち筋となり得るAIモデルとして開発が急加速され特に注目を集める。
政府と民間企業が連携した研究開発・AIインフラ整備などには戦略的な投資がなされる。

3.「AIの信頼性を高める」の近未来
AIセーフティ・インスティテュート(AI安全性に関する評価手法や基準を検討するために2024年に設立された機関)によるAIモデルの技術的評価とリスクの実態把握、技術的・制度的なガバナンスが強化される。
ディープフェイクなどAIを悪用した問題に対する調査研究や、サイバー攻撃や詐欺などの各種犯罪への対応が強化される。

4.「AIと協働する」の近未来
AI人材の育成のため、小中学教育段階からAIの基礎的知識や情報活用能力の向上が試される。
また、人がAIとどう付き合うか、人とAIの役割分担の在り方などを探究し、AIに依存・代替されるのではなく人としての価値を発揮する「人間力」を育む環境が整備される。
AIの進展による格差や排除を防ぎAI社会から取り残される者を生まない取り組みと、AI時代に相応しい働き方の方向性が検討され始める。

まとめ
日本のAI開発と利活用が飛躍的に前進する環境が整いつつあります。
その結果、AIを使わないことが最大のリスクとなり、AIをどのように利活用できるかによって企業の存亡をも左右することに繋がっていくことになるかも知れません。
この数年でこれまでの常識は大きく変わることになるでしょう。
「世界で最もAIを開発・活用しやすい国」をめざし日本政府は本格的に始動しています。
それはAI法とAI基本計画を見ると明白です。
この流れに取り残されることがないよう、"AI時代を生き抜く力"が企業にも個人にも強く求められる世の中になりそうです。
2026年1月
株式会社 日立情報通信エンジニアリング
エンジニアリング事業部 第5本部 Edge AIセンタ 福島 公洋
※編集・執筆当時の記事のため、現在の情報と異なる場合があります。編集・執筆の時期については、記事末尾をご覧ください。
出典:内閣府 AI戦略(https://www8.cao.go.jp/cstp/ai/index.html)