日々の仕事に追われ、ストレスが溜まっている皆さんへ。
最近、私はマシュー・ウォーカーの『睡眠こそ最強の解決策である』を読みまして、睡眠とストレスの深い関係に気づきました。特に「睡眠負債」という言葉が心に響きました。このブログでは、ストレスフルな仕事を抱える皆さんに、良質な睡眠を確保するためのヒントをお届けします。
前編 睡眠とはなんぞや
■はじめに
「睡眠なんて、ただの休息でしょ?」と考えていた私。しかし、ページをめくるうちに、睡眠が私たちの心身の健康にどれほど重要かを実感しました。特にストレスの多い環境で働く人々にとって、良質な睡眠はパフォーマンス向上の鍵です。お酒を楽しむ方にも役立つ情報がありますので、ぜひ最後までお付き合いください。
■睡眠とストレスの関係性
ウォーカーの著書によれば、ストレスは睡眠に悪影響を及ぼし、逆に睡眠不足がストレスを増幅させる悪循環が存在します。ストレスを感じると、体はコルチゾールというストレスホルモンを分泌します。このホルモンが「戦うか逃げるか」の緊張状態を引き起こし、リラックスを妨げるのです。その結果、以下のような影響が現れます。
・入眠困難:脳が興奮状態になり、リラックスできずに寝つきが悪くなる。
・中途覚醒:睡眠中に何度も目が覚めることが増え、深い睡眠が得られなくなる。
・睡眠の質の低下:ノンレム睡眠やレム睡眠が不足し、疲労感が残る。
■睡眠のメカニズム
深い睡眠(ノンレム睡眠)と浅い睡眠(レム睡眠)は、それぞれ異なる役割を持ち、どちらも私たちの健康にとって不可欠です。以下に、それぞれの役割を詳しく見ていきましょう。

(1) 深い睡眠(ノンレム睡眠)の役割
ノンレム睡眠は、身体の修復や成長を促進し、エネルギーの回復を助けます。また、“睡眠負債”を解消する役割も果たします。
ノンレム睡眠には4つのステージがあります。
・ステージ1:浅い睡眠。入眠時に見られ、体がリラックスし始めます。
・ステージ2:軽い睡眠。心拍数が減少し、体温が下がります。
・ステージ3:深い睡眠。身体の修復や成長が行われる重要な段階です。
・ステージ4:最も深い睡眠。身体の回復や免疫機能の強化が行われます。
ノンレム睡眠の効果は以下があります。
・身体の回復:成長ホルモンが分泌され、細胞の修復や再生が行われます。
・免疫機能の向上:感染症に対する抵抗力を高めます。
・ストレスの軽減:コルチゾールのレベルを低下させ、心身のリフレッシュを促進します。
(2)浅い睡眠(レム睡眠)の役割
レム睡眠は、ノンレム睡眠のサイクルの後に続き、以下の特性があります。
・夢の段階:脳が非常に活発で、夢を見ることが多いです。
・筋肉の弛緩:体はほとんど動かず、筋肉が弛緩します。
・記憶の統合:学習した情報や経験を整理・統合する役割を持っています。
レム睡眠の効果は以下があります。
・記憶の定着:学習した情報を整理し、記憶に定着させます。
・創造的思考:レム睡眠中の脳の活動は非常に活発で、問題解決能力を高めます。
(3)睡眠サイクル
深い睡眠(ノンレム睡眠)と浅い睡眠(レム睡眠)は約90分ごとに繰り返され、一晩で4〜6セットが理想です。これは、最低でも6時間(90分×4回)の睡眠が必要な理由です。
今は、スマートバンドやスマートウォッチなどのIoTデバイスでモニタリングしてスマートフォンのアプリ上でいつでも簡単に睡眠サイクルを見ることができるようになりました。便利ですよね。

ブレーク・タイム 睡眠クイズ
ここで一息つきましょう。簡単なクイズです。考えてみてください。
(答え合わせは本ブログの最尾をご覧ください。)
Q1. いびきをかきやすいのはノンレム睡眠とレム睡眠のどちらでしょう?
Q2. ノンレム睡眠の最初の段階で、体がリラックスし始めるときに経験する現象は何と呼ばれるでしょう?
- A) 睡眠麻痺
- B) 突然の筋肉のけいれん
- C) 夢遊病
Q3. レム睡眠中に特徴的に見られる眼球の動きは何と呼ばれるでしょう?
- A) 速い眼球運動
- B) 遅い眼球運動
- C) 無眼球運動
後編 睡眠とのお付き合いのヒント
■眠っていても動く!
皆さんは、寝ている時に穴に落ちる夢(私の場合)を見て、突然足が跳ね上がった経験はありませんか?私は学生時代の授業中に良く経験しました。これは「入眠時のけいれん」と関係があるそうです。脳が睡眠状態に移行する際に筋肉が反射的に収縮するためです。意識的に止めることはできないので、皆さん、重要な場面での居眠りには注意しましょう!
■お酒との付き合い方
私の楽しみでもあるお酒と睡眠についてお話しします。
仕事終わりに夕食と共にお酒を楽しむのが私のルーティン。最初はリラックスできていい気分になります。次第に「もう一杯」となり、気づけば飲みすぎてしまうこともしばしば。お酒を飲むと、確かに寝つきは良くなるのですが、実は深い眠りを妨げることがあると知り驚きました。アルコールは睡眠サイクルを乱し、特にレム睡眠を減少させることがあります。
そこで、私が実践しているのは「お酒を楽しむ時間を工夫すること」です。寝る2時間前(理想は4時間前)にはお酒を切り上げると、睡眠の質が保たれ、朝の目覚めがスッキリと感じられるようになりました。また、ノンアルコールの日を設けることで、良い睡眠が得られる日を作るのもおすすめです。

■睡眠負債について
最近話題の「睡眠負債」についても触れます。「睡眠負債」とは、必要な睡眠時間(理想は7〜9時間)に対して実際に得られた睡眠時間が不足している状態をさします。この不足が蓄積され、それが負債となって心身にさまざまな悪影響を及ぼします。
(1) 睡眠負債のメカニズム
・睡眠の質の低下:睡眠不足が続くと、ノンレム睡眠が不足し、脳や身体の回復が不十分になります。
・ホルモンバランスの崩れ:ストレスホルモンや食欲を調整するホルモンのバランスが崩れ、過食や体重増加の原因となります。
・認知機能の低下:睡眠不足は注意力や記憶力、判断力を低下させ、日常生活に支障をきたします。

(2) 睡眠負債の解消法
睡眠負債を解消するための効果的な方法を以下にまとめます。実践するのは簡単ではありませんが、質の高い深い睡眠を得ることが重要です。できる事から試してみて下さい。
・規則正しい睡眠習慣の確立:毎日同じ時間に寝起きすることで、体内時計を整え、睡眠の質を向上させます。
・昼寝の活用:短時間の昼寝(20〜30分程度)を取り入れ、エネルギーを回復します。ただし、長時間の昼寝は夜の睡眠に影響を与えることがあります。
・環境の整備:静かで暗い快適な睡眠環境を整えることで、より良い睡眠を促進します。
・リラックスする時間を持つ:寝る前にリラックスする時間を設け、ストレスを軽減します。読書や瞑想、軽いストレッチが効果的です。
・カフェインやアルコールの制限:特に寝る数時間前には避けることで、睡眠の質を向上させます。さらに、寝る1時間前にはスマホやパソコンのブルーライトを避けることが推奨されています。
ポイント!(寝貯めの効果?)
よく週末に長時間寝ること(寝貯め)で一時的に疲労を回復することはできますが、睡眠負債を完全に解消することは難しいとのことです。やはり、毎日の規則正しい睡眠習慣を確立することが、睡眠負債を解消するためには最も効果的だそうです。
ちなみに、我が家は毎朝5:00前に(休日・祝日関係なく)猫に起こされます。おかげさまで規則正しい生活が送ることができています。
■人間は年を取ると早く目が覚める理由について
年齢を重ねるにつれて、睡眠サイクルは変化します。若い頃は、深い睡眠(ノンレム睡眠)が長く続くのに対し、高齢者はこの深い睡眠の時間が短くなり、浅い睡眠(レム睡眠)の時間が増える傾向があります。このため、早く目が覚めてしまうことが多くなるそうです。
その理由に、睡眠を調節するホルモンであるメラトニンの分泌が年齢とともに減少します。メラトニンは、体内時計を調整し、睡眠の質を保つ役割を果たしていますが、その減少により、睡眠の質が低下し、早朝に目が覚めることが増えることが調査結果で出ているそうです。
ということで、年を取ると早く目が覚めるのは、自然な生理的変化の一部です。しかし、良質な睡眠を確保するための工夫をすることで、睡眠の質を改善することが可能です。睡眠負債の解消法に書いた睡眠環境の整備や、リラックスするためのルーティンを取り入れることで、より良い睡眠をめざしましょう。
■まとめ
このブログが、ストレスフルな仕事を抱える皆さんの睡眠改善の一助となれば幸いです。質の高い睡眠を手に入れ、心身ともにリフレッシュしましょう!

■睡眠クイズの答え合わせ
Q1:いびきをかきやすいのはノンレム睡眠とレム睡眠のどちらでしょう?
A1:答えは「主にノンレム睡眠」のときです。
ノンレム睡眠の深い段階では、筋肉がリラックスし、気道が狭くなることがあるため、いびきが発生しやすくなります。無呼吸症候群もここで起きやすくなります。
Q2:ノンレム睡眠の最初の段階で、体がリラックスし始めるときに経験する現象は何と呼ばれるでしょう?
A2:答えはB)「突然の筋肉のけいれん」(「入眠時のけいれん」「ジャーキング」とも呼ぶ)
Q3:レム睡眠中に特徴的に見られる眼球の動きは何と呼ばれるでしょう?
A3:答えはA) 「速い眼球運動」(Rapid Eye Movement:頭文字REMがレム睡眠となった)
2025年6月
株式会社 日立情報通信エンジニアリング
エンジニアリング事業部 事業戦略本部 堀籠 智
※編集・執筆当時の記事のため、現在の情報と異なる場合があります。編集・執筆の時期については、記事末尾をご覧ください。