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CTO’s Office

連載コラム:SD-WAN/SASEを用いて
ハイブリッドクラウドのネットワークを実現する秘訣とは?
【第1回】ハイブリッドクラウドによるグリーン化に向けた
価値の提供

CTO 松並 直人
株式会社 日立情報通信エンジニアリング CTO  松並 直人

キーワード

  • #ネットワーク
  • #SD-WAN
  • #SASE
  • #ハイブリッドクラウド
  • #グリーン

CTOの松並です。
以前お届けしたコラム:「SD-WANが不可欠であるといえるワケ」において、企業情報システムが「@ハイブリッドワーク」と「Aハイブリッドクラウド」の2大潮流に対応するために大変革のさなかにあり、その実現のためには「イントラネットとインターネットのセキュアな融合」を図る次世代のネットワークシステム「SD-WAN/SASE」が不可欠であることをお話ししました。

さて、今回は、先のコラムの続きとして、「SD-WAN/SASEを用いてハイブリッドクラウドのネットワークを実現する秘訣とは?」と題して、4回にわたる連載コラムで解説していきたいと思います。

4回の連載コラムのあらましは次の通りです。
【1回目】ハイブリッドクラウドによるグリーン化に向けた価値の提供 ← 本コラム
【2回目】ハイブリッドクラウドを実現するネットワークジャーニー
【3回目】SD-WAN/SASEによるハイブリッドクラウドのネットワークの構築
【4回目】IoTエッジネットワークのゼロトラストセキュリティ

1回目のこのコラムでは、ハイブリッドクラウドの進展とグリーン化に向けた価値の提供について概観していきます。

ハイブリッドクラウドの進展

近年、国内クラウド市場は急拡大の勢いを見せています。その拡大の要因としては、SaaSやIaaSに代表されるパブリッククラウドサービスの利用の普及とリモートワークの進展が挙げられます。

図1.ハイブリッドクラウドの進展と価値創出

図1.ハイブリッドクラウドの進展と価値創出

従来の企業情報システムは、オフィス拠点とプライベートクラウドを専用線で接続するシンプルな閉じた環境でしたが、このようなクラウド利用の普及により、企業ネットワークは外部にも接続しなくてはならなくなってきました。また、工場などのIoTエッジ拠点についても、例えば「つながる工場」としてスマートファクトリーへ進化させるため、AIによるデータ分析を行うパブリッククラウドとつながるようになってきました。

図1に示すとおり、プライベート・パブリック両方のクラウドと、オフィス・リモートワーク・IoTエッジなどの多様な拠点で構成される「ハイブリッドクラウド」と呼ばれる新しい企業情報システムを実現するには、これらの間をつなぐハイブリッドクラウドのネットワークが重要な役割を果たします。

このような中、当社を含む日立グループは、デジタルを使って環境負荷の少ないグリーンなIT環境を実現する、という時代の要請に対して、@環境に配慮したデータセンターネットワークの実現というグリーン化に向けた価値の提供と、A柔軟なネットワークによる安全・安心なセキュアなアクセスの実現というデジタルに向けた価値の提供、の2つを推進してまいります。

ネットワークに対するグリーン化に向けた価値の提供

でははじめに、日立によるグリーン化に向けた価値の提供の一環としての当社の取り組みである、@環境に配慮したデータセンターネットワークの実現について取り組み内容をご紹介します。

図2.グリーン化に向けた価値の提供

図2.グリーン化に向けた価値の提供

図2の左側に示すとおり、お客さまの脱炭素経営という取り組みに対して、日立はハイブリッドクラウドソリューションEverFlex from Hitachiを提供し、お客さまのDXシステムの省エネルギー化で貢献していきます。EverFlex from Hitachiでは、ストレージやサーバーの電力量やCO2排出量を可視化する高度な運用サービスを提供する予定です。

現在、当社はこのサービスをルーター、スイッチなどのネットワーク機器に対しても拡大して、日立のITプラットフォーム全体をグリーンに運用することをめざしています。これにより、例えば、お客さまはネットワーク負荷の高い業務の構成を見直して、そのトラフィックを低消費電力のスイッチに移行することで環境負荷を削減する、といった運用ができるようになります。

現在、シスコシステムズ合同会社、日立製作所、当社の3社連携で、電力量・CO2排出量を可視化するサービスのネットワーク機器への拡張を検討しています。プロトタイプのデモ映像を用意しましたので、ご覧ください。

動画:グリーンへの取り組み

動画:グリーンへの取り組み

動画について説明します。

最初の画面は、高度運用サービスのダッシュボードのトップ画面です。ラック実装のイメージが表示されており、サーバー、ストレージ、スイッチなどの物理的な搭載の様子を確認することができます。

この中で、スイッチを選択してみます。すると、選択されたスイッチのCO2排出量、電力消費量、動作温度を確認することができます。また、CO2排出量のみを個別に表示することも可能です。さらにシステム全体を選択することも可能です。その場合、システム内の全てのスイッチのCO2排出量の合計が表示されます。

このグラフを見ると、CO2排出量が途中から減少していることがわかります。これは、その時点でスイッチを消費電力の低い機種のスイッチに交換したことでCO2排出量が削減できたことの効果を示しています。

このように、可視化した情報を元にして、より環境負荷の少ない構成への移行を検討すること、またその移行による効果をビジュアルに確認すること、などにご活用いただけるようになります。

ハイブリッドクラウドに対するクラウドリフト&シフトのユースケース

続いてハイブリッドクラウドをどのような形で実現していったらよいか具体的に見ていきましょう。

これまで当社では、お客さまの業務システムのクラウド移行、いわゆる「クラウドリフト&シフト」のお手伝いに取り組ませていただきました。そこで、お客さまの先進的なクラウドリフト&シフトに関する事例を分析・整理すると、次の図に示す2つのユースケースが今後の大きな流れになると考えています。

図3.クラウドリフト&シフトのユースケース

図3.クラウドリフト&シフトのユースケース

1つ目は、図の左側に示しているように、金融・公共分野など情報系システムをパブリッククラウドにシフトして、在宅勤務などのリモート拠点から専用線を介さずインターネット経由で直接アクセスする、というユースケースです。このケースでは専用線とインターネットを併用することになりますが、それらの使い分けとトータルでのサイバーセキュリティ対策が課題となります。

2つ目は、図の右側に示す、主に製造分野をはじめとして、工場などのIoTエッジ拠点の現場データを分析・利活用するためのIoTエッジシステムをパブリッククラウドにシフトして、IoTエッジ拠点からインターネット経由で直接データを収集する、というユースケースです。こちらのケースでは専用線とインターネットの使い分けに加えて、多種多様な機器・デバイスが接続されることに対応して、不測の脅威の検出とその排除が課題となります。

これら、@情報系システム、AIoTエッジシステムの2つのケースに対して、当社はお客さまのクラウドリフト&シフトによるハイブリッドクラウドの構築へのご期待にお応えするため、これまでのネットワークの構築・運用経験を基に、専用線とInternetを使いこなした安全・安心なセキュアネットワークの構築をご支援して参ります。

次の2回目のコラムでは、「ハイブリッドクラウドを実現するネットワークジャーニー」と題して、クラウドリフト&シフトの段階的移行であるクラウドジャーニーに合わせてネットワーク側もどのように専用線とインターネットを使いこなし、どのようなステップでネットワークとセキュリティを進化させていくのかを具体的に解説いたします。

株式会社 日立情報通信エンジニアリング
CTO 松並 直人