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Hitachi

株式会社 日立情報通信エンジニアリング

ICT@ETモノづくりNews Vol.8
無線LAN組込みソリューション

ソフト・ハードのカスタマイズ技術でお客さまのニーズに対応

2011年9月

営業窓口

無線LANは、製品・サービスの利便性や運用コスト低減の効果があるだけでなく、新たなビジネスの創出を可能にする重要な技術です。
例えば、Wi-Fiスポットの普及で、外出先でもPCを使った高速通信が可能となりビジネススタイルの幅が大きく広がりました。また、通信機能を持たなかった機器に無線LANを組み込んだスマートメータの利用により、電力システムなど社会インフラのレベルでの変革が進んでいます。このような製品・サービスの実現を強力に支援するのが、当社の「無線LAN組込みソリューション」です。
「無線LAN組込みソリューション」は、無線システム開発の要となる性能予測技術や評価・改善技術などをもとに、ハードウェア、ソフトウェア両方のカスタマイズでご要望にお応えし、お客さまの無線応用製品の開発を支援する設計・開発ソリューションです。
無線LANを組み込むご要望がございましたら、ぜひ当社にお声がけください。

なぜ、無線LANなのか?

当社は、ハードウェア、ソフトウェアの両面で無線技術の開発を推進し、無線を利用することによってお客さまの製品の価値を高めることを目指しています。ひと言で「無線」といっても、その方式・基本仕様や用途、実現形態はさまざまです。当社はそれらの中でも、無線LANを重視しています。

図1.各種無線技術がカバーする領域
図1.各種無線技術がカバーする領域

図1は、通信距離と通信速度を軸として、各種無線技術がどのような関係にあるのかを示したものです。これを見ればわかるように、Wi-Fiや特定小電力無線、ZigBee、RFIDなどを利用した無線LANは、非常に広範な領域をカバーしていることがわかります。このことは、無線LANが、さまざまなアプリケーションに利用できる可能性を秘めているということを表しています。

このような背景から、当社は、これまでに培ってきた無線技術を活用した「無線LAN組込みソリューション」の事業展開を進めています。

満たすべき3つのニーズ

無線LANを利用したシステムでは、満たさなければならない基本的な事柄があります。具体的には、「高速化」、「信頼性の確保」、「消費電力の削減」という3つのニーズが存在します。まずは、業界動向も交えて、それぞれの要件について確認してみましょう。

高速化

まず、無線LANの標準規格について俯瞰すると、IEEE 802.11n(正式版)では、現状、300Mbit/s(メガビット/秒)、450Mbit/s、600Mbit/sと高速化が進んでいます。2012年以降には、IEEE 802.11ac/adに対応するLSIや応用製品の商品化が進み、無線LANにおいて5Gbit/s(ギガビット/秒)という通信速度が実現されます。

高速化が求められる例として、医療分野について考えてみます。この分野では、医療機器の周辺に存在するケーブルの本数を削減したいという強いニーズがあります。加えて、MRI(磁気共鳴画像装置)や、高度に専門的な診断ツールなどでは、高精細画像を扱うことになります。例えば、レントゲンのように静止画を扱う機器では、IEEE 802.11nの300Mbit/s程度以上の通信速度が有効と考えられます。同規格にのっとった無線システムによって高速に画像データのやり取りが可能になれば、ケーブルを使用する必要がなくなります。

また、IEEE 802.11ac/adが実現すれば、高精細の動画像への対応が可能になります。つまり、MRIや超音波検査装置においても有効な無線通信が行える可能性が高まったということです。結果として、これらの装置におけるケーブルレス化が進みます。

さらに、このような標準規格を採用することによって、スループットの向上(誤り率の低減)、パフォーマンスの向上、および相互運用性の確保というメリットが得られます。そして将来的に無線ネットワークの性能が向上すれば、さらなるパフォーマンスの向上が図れるとともに、無線ネットワークを利用したダウンロード・インストール手法によって、機器のソフトウェアを更新することが可能になります。

当社は、このような標準規格を核とした技術を活用することにより、アプリケーションにとって適切なソリューションを提供することを目指しています。

信頼性の確保

無線LANは、ワイヤレスであるが故に、アクセスの問題や電波干渉の問題が生じる可能性を抱えています。例えば、プラントで使用するセンサや計測器からのデータを、無線を利用することによって遠隔地で収集するというニーズがあります。このような場合でも、ノイズが多い中、安定した無線通信が行えるようにしなければなりません。

無線におけるこのような問題については、通信の信頼性を確保する設計開発ソリューションで対応しています。機器が使用される環境での実測データを基に、機器設計の段階から、無線に絡む運用時の問題点までを総合的に解決できる体制を有しています。

また、現在、産業用途向けの無線通信については、ISA100という規格によって標準化が行われています。当社も、産業用途において、無線LANをベースとした信頼性の高い無線通信を実現するための検討を進めています。

消費電力の削減

無線LANの端末は、携帯電話やスマートフォンに代表されるように、常時電源が供給されていない場合が多く、なるべく充電をせずに続けて使用するには端末機器の省電力化設計が必要になります。

無線LAN用のLSIは常に進化を続けており、低消費電力での動作を可能とする種々の仕組みが搭載されるようになりました。当社は、このような仕組みをうまく活用することで、端末機器はもちろん、システム全体としての低消費電力化を実現するよう、省エネを目指した設計開発ソリューションを提供します。

ソリューションを支える技術的バックボーン

無線LANソリューションのバックボーンとなっているのは、種々の領域にまたがる当社の特徴的な技術群です。

各種方式に対応可能な基盤技術

屋外に設置する無線機器の場合、使用環境によって外来ノイズの有無や通信可能距離の長短など、さまざまな差異があることが考えられます。通常は、Wi-Fiによる無線LAN技術で対応可能ですが、設置環境によっては、ほかの無線方式の方が適している場合があります。具体的には、特定小電力無線、ZigBee、RFIDなどが候補として考えられます。当社は、これらいずれの方式にも対応できるような技術的バックボーンを有しています。すなわち、無線モジュールの開発技術、制御ソフトウェアの開発技術、電池駆動に対応可能な省電力技術、アナログ・デジタル混在LSIの回路技術など、どの方式を用いる場合でもベースとなる技術を有しています(図2)。

図2.各種無線方式に対応可能な基盤技術
図2.各種無線方式に対応可能な基盤技術

また、当社の特徴的な技術として、アドホック通信技術(マルチホップ通信技術)が挙げられます。アドホック通信の中核は、自律ルート選択を実現する制御ソフトウェアです。これは、アドホックネットワークにおいて、端末自身が適切な通信ルートをリアルタイムで自動的に選択できるようにするというものです。

通信性能の事前予測技術

無線システム特有の問題は、実利用時の環境において、どの程度の性能が得られるのかを事前に予測するのが難しいことです。できる限り正確な予測をして、目標となる性能を達成するシステムを設計しなければなりません。

当社では、実利用時の環境における実測値を基に回路と伝播路のモデル化を行い、それらを用いたシミュレーションを実施して、適切な予測を導き出すことが可能です(図3)。どの通信方式を利用すべきなのか、実際の伝播路ではどのような性能が得られるのかということを定量的に解析することができます。そのため、試作品の評価段階で問題が発生し、大きな手戻りが生じるといったリスクを回避することができます。

図3.性能の事前予測技術
図3.性能の事前予測技術

障害のモニタリング技術

障害への対応も、無線システムにおいて特に重要な要素の1つです。当社は、通信の状態をモニタリング(監視)することで、障害の発生個所を迅速に特定し、問題に対処できるようにしています。

例えば、複数の端末からなる無線メッシュネットワークがあったとします。この場合、各端末に、無線パケットのモニタリング用ソフトウェアを組み込んでおくことで、回線の接続状態をリアルタイムに把握することができます。モニタリングの結果は、GUIベースのソフトウェアによって視覚的に表示することが可能です(図4)。これにより、例えば端末間の中継ルートや、パケットデータ内の誤りを一目で確認できるようになります。

図4.障害のモニタリング技術
図4.障害のモニタリング技術

無線性能の評価・改善技術

設計技術が重要であることはもちろんですが、当社の技術には評価・改善の面でも特長があります。

当社は、電子機器のEMC(電磁両立性)試験サービスを提供するための「EMCセンタ」を運営しています。 同センタは、10m法に対応可能な電波暗室を3基備えたもので、ISO/IEC 17025に基づく各種認定を取得しています。 評価には、専任の無線技術者が当たります。 このEMCセンタなどの評価設備を用いて計測を実施し、スペクトル解析やアイパターン解析を行うことにより、EMI(電磁妨害)・EMS(電磁感受性)の評価を行うことが可能です。 不具合が見つかった場合には、高周波シミュレータ(アジレント・テクノロジー社のAgilent ADS)や3D電磁界シミュレータ(アンシス・ジャパン社のHFSS)などのシミュレーションツールを利用して原因の解明に取り組みます。 これまでの開発実績によって培われた当社のノウハウを駆使して、回路や部品の適正化など、スピーディに対応できます(図5)。

図5.性能の評価・改善技術
図5.性能の評価・改善技術

ハードもソフトも、カスタム対応が強み

当社は、これまで、無線関連の事業として、応用製品の開発、製造アウトソーシング、製品販売などを行ってきました。前掲の図1に例として示した各種無線技術は、すべて当社がこれまでに開発を手掛けてきたものです。すなわち、近接無線から公衆無線網まで、広範な領域をカバーする技術と製品開発の実績があります。無線LANについては、通信、電力関連、車載、家電などの分野で用いる応用製品を開発してきました。また、超高速無線の分野では、医療機器や高精細映像機器などで使用する製品を手掛けています。

当社の大きな特長は、ハードウェア、ソフトウェアともにカスタマイズを施すことで、お客さまのニーズに合わせた製品を提供していることです。 製品の研究開発や試作開発を通じてお客さまのニーズを詳細に分析することで、カスタムの製品を1つのソリューションとして開発することが可能です。

技術的な強みとしては、ハードウェア、ソフトウェアの両方を、総合的にカバーしているところが挙げられます。ハードウェアについては、RFアナログ回路設計やモジュール設計、無線LSI設計、FPGA設計などに対応可能です。ソフトウェアについては、制御ソフトウェア、ファームウェア、無線LANドライバなどを網羅します。

また、特に通信プロトコルについては、標準規格に完全に準拠した実装を行うことが可能です。場合によっては、カスタム定義のプロトコル開発なども行えます。さらに、無線LAN用のLSIベンダーとの緊密な連携が可能なことも特長の1つです。そうしたLSIベンダーの例としては、Qualcomm Atheros社(旧Atheros Communications社)が挙げられます。同社との連携により、カスタム対応で無線ドライバ(プロトコルを含む)を開発することなどが可能です。

上述したような広範囲の技術領域にわたって、お客さまのニーズに合わせたカスタム対応が可能であることが当社の強みです。

多様な開発事例・適用例

続いて、無線LANに関する当社の開発事例や適用例をご紹介します。

開発事例:ゲームセンタ向け無線システム

ゲームセンタにおいて、ゲーム機へのコインの投入数や、両替機の稼働状況、クレーンゲームなどの景品の出力管理などを行う無線システムです(図6)。特定小電力無線を利用する当社の無線モジュールは、ゲームセンターのようなノイズの多い環境でも安定した通信を実現します。1:1、1:Nでの通信が可能です。

図6.ゲームセンタ向けの無線システム
図6.ゲームセンタ向けの無線システム



開発事例:位置情報検知システム基地局

位置情報検知システムは、無線LANの信号を基に位置情報検知を行うシステムで、当社が開発した基地局が日立製作所の「AirLocationII」に採用されています(図7)。IEEE 802.11b/gを利用する市販の無線LAN端末を使用することができ、GPS信号が届かない屋内や地下街でも測位が可能であるという特長を備えています。三辺測量方式と電界強度方式を併用することにより、1〜3mの測位精度、200回/秒の測位頻度を実現しています。

図7.位置情報検知システム
図7.位置情報検知システム



開発事例:無線LAN開発キット

2.4GHz(IEEE 802.11b/g)と5GHz(IEEE 802.11a)の両方式に対応した無線LAN開発キットです(図8)。無線LAN用のLSIにはQualcomm Atheros社のAR5000シリーズを採用し、同社標準のドライバを使用しています。プロセッサはルネサス エレクトロニクス社のSH-4、OSはSH-Linuxです。

当社の場合、Qualcomm Atheros社との正規契約に基づいて、ハードウェア・ソフトウェアの両面から、システムのカスタマイズ、最適化を実施することが可能です。 お客さまの製品を無線LAN化する際の評価機開発などにご利用いただいています。

図8.無線LAN開発キット
図8.無線LAN開発キット



適用例:ミリ波デバイスシミュレータ

最先端のIEEE802.15.3cに準拠したミリ波(60GHz帯)伝送装置開発を通して、今後開発されるミリ波装置のプロトコル検証の実現およびミリ波装置でのネットワーク接続状態の可視化を実現していきます。
この装置が実現されれば、ミリ波装置開発において品質・開発効率向上に貢献できます。



適用例:工場敷地内の計器の情報取得と可視化

工場敷地内に点在する電力計などの計器の測定情報収集は、人手で行うと手間がかかります。 そこで遠隔の機器などに無線LANモジュールを組み込むことで自動情報収集を可能にし、測定した情報を本棟で一元管理できるとともに見える化を自動で実現できます(図9)。
無線LANを使えば、本棟から遠く離れた計器まで、電柱や地中を介して新たに通信ケーブルを敷設する必要はありません。
計器や設備機器などを無線化する組込みソリューションで、測定情報収集の手間を軽減することができます。

図9.敷地内の遠隔計器情報取得システムの例
図9.敷地内の遠隔計器情報取得システムの例



適用例:車両内での高速データ通信とケーブル削減

電車や自動車などの車両内で、画像データやセンサデータなどを無線通信することで通信ケーブルの削減を実現します。 例えば自動車のリアカメラ映像をフロントパネルへ無線伝送することで、車両内の映像伝送ケーブルが不要となります。 また、カメラの後付け追加なども容易になります。 通信経路の自律選択などの機能により、障害物の場所が頻繁に変わったり、ノイズの多い環境でも安定した通信を行うことが可能です(図10)。
車両内や機器内での高速かつ安定した無線通信ソリューションを提供します。

図10.車両内の高速無線通信システムの例
図10.車両内の高速無線通信システムの例



広がる用途、スマートフォンが起爆剤に

ここまで、当社の無線LAN組込みソリューションの技術的な特長を中心に説明してきました。無線LANは、今後も用途の拡大が期待される通信方式ですが、当社では、スマートフォンの爆発的な普及が無線LANのさらなる市場拡大の引き金になると考えています。

現在のスマートフォンでは、3G(第3世代)の携帯通信システムによってデータのダウンロードを行います。しかし、3Gの通信速度がネックとなって、アプリケーションソフトウェアのデータ容量が大きすぎる場合には、ダウンロードが行えないという状況が生じています。

54Mbit/sの無線LANであれば、その通信速度は、3G携帯の約5倍に相当します。そのため、アプリのダウンロードには3G携帯の通信網を使用するのではなく、Wi-Fi端末経由でダウンロードを行い、さらに携帯電話端末との間を無線LANで伝送するという使い方が非常に有効です。当社は、このような需要に対応することで、無線LAN事業の展開を図っていきます。

また、HEMS(Home Energy Management Systems:家庭用エネルギー管理システム)やFEMS(Factory Energy Management System:工場用エネルギー管理システム)も、無線LANの応用分野として想定しています。これらの用途では、無線LANとセンサネットワークを組み合わせたシステム向けの製品の開発を進めていきます。

さらには、無線LANとZigBee、無線LANとPLC(電力線通信)といった組み合わせの用途も考えられます。 このように、通信形態の異なるものに対応可能な通信アダプタを用意し、センサからの温度データなどを、ZigBeeあるいはPLCといった通信手段によって収集し、公衆無線LAN経由でセンタに送信するといった使い方があり得るでしょう。 また、スマートフォンでWebにアクセスし、センタに蓄えたデータを参照することを可能にする“見える化”などに役立てることもできるはずです。

当社では、長年積み重ねた技術蓄積に基づくモノづくり技術によって、個々のお客さまのニーズに対応したカスタムの無線LAN通信ボードなどを中核とする無線LAN組込みソリューションを提供していきます。

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資料請求・お見積もり・ご相談は、こちらからお気軽にお問い合わせください。

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